紹介や既存の取引先が仕事の入口だと、自分のサービスを説明する資料を後回しにしがちです。初めて会う相手には口頭で説明し、あとで資料を送ってほしいと言われてから慌てて一から作ります。その繰り返しで、提案のたびに半日が消えていきます。
資料が伝わるかどうかを左右するのは、デザインの腕ではありません。何をどの順番で載せるかという構成で、出来の大半が決まります。
この記事は、受託の制作やコンサルをひとりで営む社長に向けて書きました。社員や営業の専任がいない前提で、資料の作り方から、ひとりで回せる運用まで扱います。
7ページの構成表に沿って進めれば、今日中に1ページ目の見出しと結論を書き出せます。手元に紙を1枚用意して読み進めてください。
- サービス紹介資料は7ページ構成で、半日あれば形にできます
- 1ページ目は「誰の・どんな悩みを・どう解決するか」から書きます
- 本文より先に見出しと結論を1文で書き出すと全体がぶれません
- 直すのは料金と実績だけと決めると、資料を使い回せます
一人社長にサービス紹介資料が必要な理由
その場限りの口頭説明では、相手があとからサービスの内容を確かめられません。資料は、あなたがいない場面で代わりに説明を再現するために作ります。
総務省の就業構造基本調査をもとに中小企業庁がまとめた白書によると、自ら事業を営む起業者は2022年時点で全国に約466万人います。営業も制作もひとりでこなす立場では、口頭の説明だけに頼れない場面が誰にでも起こります。
出典:中小企業庁 2024年版 小規模企業白書 第2節 新たな担い手の創出
特に企業を相手にする仕事では、会った人がその場で決めないことが多くあります。目の前の担当者が、社内の決裁者に内容を説明し直す場面が出てきます。そのとき頼りになるのは口頭の記憶ではなく、手元に残る資料です。
問い合わせをくれた直後の相手は、関心が高い状態です。関心が薄れる前に、同じ内容を何度でも伝えられる資料があると話を進めやすくなります。
資料があると、紹介してくれる人にも助けてもらいやすくなります。紹介者は、あなたの仕事を自分の言葉で説明するのが難しい立場です。その人が資料を1通転送するだけで、正確な紹介が完了します。ひとりの会社ほど、代わりに説明してくれる資料が役に立ちます。
相談者口頭で説明できているのですが、資料は後回しでもよいのではないですか?



口頭の説明はその場で消えてしまいます。相手が社内で説明し直す場面を考えると、手元に残る資料にこそ役割があります。説明のたたき台にもなるので、作っておくと毎回の準備も楽になります。
作り始める前に決める読み手と使う場面
作り始める前に、2つだけ決めます。誰に見せるかと、どの場面で使うかです。ここを決めないまま作ると、誰にも響かない説明になりがちです。
読み手は、具体的な1人に絞ります。実在の取引先の担当者を思い浮かべると決めやすいでしょう。たとえば、従業員が10人以下の会社の社長で、Webに詳しくない人、のように属性と悩みを1文で書きます。「この人に読ませるなら何を書くか」を考えると、載せる項目と載せない項目の区別が付きます。
使う場面で、資料の分量と書き方は変わります。
- 初回の打ち合わせで一緒に見る場合は7ページ程度
- メールで先に送る場合は1ページ目だけで結論が伝わる形
- 紹介者経由で回す場合はその人でも説明できる書き方
3つの場面のうち、迷ったら打ち合わせ用から作ります。対面で使う資料は、あとから送る資料にも転用しやすいからです。逆方向の転用は、書き直しが増えがちです。
業種の違う相手に出す版が必要になったときは、複製して、相手の課題を書く2ページ目だけを入れ替えます。全部を作り直す必要はありません。
読み手を実在の1人に絞ると、資料の書き方が具体的に決まります。この記事では、初回の打ち合わせで使う7ページの資料を基準に進めます。



読み手として思い浮かべる取引先がいない場合はどうしますか?



これから取引したい業種の、一般的な担当者像で構いません。実在の相手が決まった時点で、書き方をその人向けに直してください。
資料に載せる7つの要素と構成の順番
構成は7ページで考えます。各ページに入れる要素と順番は、次の構成表のとおりです。
| ページ | 要素 | 書くこと |
|---|---|---|
| 1 | 表紙 | 誰のどんな悩みを解決するかの見出しと結論 |
| 2 | 課題の提示 | 読み手が抱えている悩みを相手の言葉で並べる |
| 3 | 解決策 | サービスの内容と、悩みへの対応関係 |
| 4 | 導入後の変化(ベネフィット) | 導入後に相手の仕事がどう変わるか |
| 5 | 実績と根拠 | できることの裏づけや仕事の進め方 |
| 6 | 料金と流れ | 料金の目安と、相談から納品までの流れ |
| 7 | プロフィール | 屋号、略歴、連絡先 |
この順番には理由があります。相手が最初に知りたいのは、自分の悩みを分かってもらえるかどうかです。だから課題の提示を前に置き、サービスの説明はそのあとに並べます。
2ページ目の課題の提示では、相手が日ごろ口にしている言い方で書きます。専門家の言葉に置き換えないのがコツです。3ページ目の解決策では、各課題と自分のサービスの対応を1対1で書きます。ここまで読んだ相手が、次に知りたいのは変化の中身です。
4ページ目のベネフィットは、サービスによって相手が得る良い結果のことです。機能の説明ではなく、相手の仕事がどう変わるかを書きます。「何ができるか」ではなく「相手の何が楽になるか」で考えます。
5ページ目の実績は、件数の列挙でなくても成立します。仕事の進め方を時系列で書くだけでも、相手は依頼後の流れを想像できます。
6ページ目には、料金の目安と、相談から納品までの流れを書きます。流れに日数の目安を添えると、具体性が増します。料金を書くかどうかと書き方は、「よくある質問」で説明します。
7ページ目のプロフィールは、簡潔で構いません。屋号と連絡先、そして相談の窓口が分かる1文があれば足ります。読んだあとの相手が、迷わず連絡できることが目的です。
どのページにも共通する決まりが1つあります。1ページに伝えることは1つです。詰め込みたくなりますが、絞ったページのほうが口頭の補足と組み合わせやすくなります。



実績が少ないのですが、5ページ目は作れるのでしょうか?



件数ではなく中身で書けます。仕事の進め方や、相談から納品までに守っていることを具体的に書くページにしてください。守れることが書ければ、それは十分な根拠です。
1ページ目に書く見出しと結論の決め方
7ページのうち、いちばん時間をかけるのは1ページ目です。ここで伝わらない資料は、2ページ目以降が読まれません。
1ページ目に書くのは2つだけです。見出しと、結論の1文です。それぞれの書き方を型で示します。
- 見出しは「◯◯の△△を解決する」という形で書く
- 結論は「私は◯◯を通じて△△を解決します」と1文で書く
見出しや結論に数字を添えるのは、手持ちの実績があるときだけにします。
結論の1文は、次の手順で作ります。
- 読み手の悩みを、その人が使う言葉で書き出す
- 自分のサービス名を、やることの説明に置き換える
- 悩みと解決策を「◯◯を通じて△△を解決します」に当てはめる
書き方の違いを、例で比べてみます。
| パターン | 1ページ目の見出しの例 |
|---|---|
| あいまいな例 | Web制作のご案内 |
| 具体的な例 | 予約が入らない整体院の空き枠を埋めるWeb予約の導入 |
あいまいな例の問題は、自分の側から見た紹介になっていることです。読み手の悩みが見出しに入っているかを、最初に確認してください。
見出しと結論が決まったら、残りの6ページの見出しも同じ型で下書きします。先に見出しを全部並べると、ページの重複や抜けに気づけます。
書き出した見出しと結論は、時間を置いてから読み直すと違和感に気づけます。時間がなければ、印刷して眺めるだけでも見え方が変わります。判断に迷ったら、読み手役の取引先に聞くのが確実です。



結論の1文がどうしても長くなるときは、どうすればよいですか?



長くなる原因は、入れたい悩みが複数あることです。いちばん相談される悩みを1つに絞ると、文は自然に短くなります。絞った悩みが外れていたら、使ったあとの反応で入れ替えればよいのです。
半日で仕上げる5つの作業手順
所要時間の目安は合計で半日です。5つの手順に分けて進めます。時間配分は編集部の目安なので、進めやすいように調整してください。途中でほかの仕事を挟まないほうが、書き直しが減ります。
準備として前の日にやることは1つだけです。素材を入れるフォルダを作り、過去の提案書をそこへ集めておきます。当日は、STEP1の確認から始められます。
ツールは、使い慣れたもので構いません。これから用意するなら、無料プランのあるツールが始めやすいでしょう。たとえばCanvaの公式ページでは、無料プランで160万点以上のテンプレートと、PDFでの出力が使えると案内されています。
出典:Canva 料金プラン
STEP1 使える素材を集める
過去の提案書、見積もり、取引先に送ったメールの文面を集めます。目安は30分です。
このとき探すのは、相手に説明して反応がよかった言い回しです。集める対象には、名刺の裏に書いたメモも含めます。説明に使ってきた言葉が、そのまま資料の文章のもとになります。新しく文章を考える必要はありません。
STEP2 7つの要素に文章を当てはめる
集めた素材を、7ページの構成表の順番に分けていきます。目安は90分です。
書けない要素は空欄のまま残して、先へ進んでください。止まることが、半日で終わらないいちばんの原因です。当てはめる作業では、文章の上手さより項目の抜け漏れの確認を優先します。文章は短いほうが、あとの配置で楽になります。
STEP3 1ページ目の見出しと結論を磨く
5つの手順のなかで、いちばん頭を使う部分です。目安は60分です。
先に書き出しておいた見出しと結論を、ここで仕上げます。「◯◯の△△を解決する」の型に沿って、見出しを書き直してください。見出しの案は3つ出し、いちばん短いものを選ぶと決めやすくなります。結論の1文が決まると、残りのページの軸がそろいます。
STEP4 テンプレートに流し込んでPDFにする
1ページにつき伝えることは1つに絞って配置します。目安は60分です。
文字の大きさや配色は、テンプレートの既定のまま使います。装飾に時間を使わないことが、半日で終わる条件です。
完成したらPDFで保存し、印刷とメール添付の両方で使える状態にします。
STEP5 声に出して読み直す
最後に、全ページを声に出して読みます。目安は30分です。
読んでいて引っかかった文は、2文に分けてください。読み手が一度で理解できる長さかどうかを、自分の耳で確かめる作業です。
5つの手順が終わった時点で、資料は使える状態です。完成度より、まず使い始めることを優先してください。直しは、打ち合わせでの反応を見てからで間に合います。



手順の途中で行き詰まったら、どこへ戻ればよいですか?



迷ったときは1ページ目に戻ってください。見出しと結論さえ決まっていれば、残りのページはその説明として書けます。
資料が伝わるか確認する3つの見直し
完成したら、渡す前に3つの点を見直します。
- 専門用語に、短い説明が付いているか
- 1ページ目だけを読んでも、意味が通るか
- 連絡先と、次にしてほしい行動が書いてあるか
資料の出来は、作り込みではなく読んだ人の反応で確かめます。可能なら既存の取引先の1人に読んでもらい、どこで読むのをやめたかを聞いてください。
数字を載せるときは、裏づけのあるものだけにします。おおまかな推測の数値は、聞かれたときに根拠を説明できません。書ける数字が少ない場合は、数字なしで進める構成に変えてください。



誰にも見せずに完成度を上げる方法はありますか?



STEP5の読み直しで、違和感のある文には気づけます。ただ最後は、読む人の反応でしか確かめられません。
使い回せる資料にする保存と更新の決まり
一人社長の資料づくりでもったいないのは、提案のたびに一から作り直すことです。使い回すための決まりを、3つ作ってください。
- ファイル名は「屋号_サービス紹介_年月」の形で統一する
- 直すのは料金と実績だけにし、月に1回の見直し日を決める
- 渡した相手と反応を、簡単な表に残しておく
内容が固まったあとは、直す範囲を料金と実績に限ると、資料を使い回せるようになります。毎回すべてを直したくなりますが、その修正時間が納品の仕事を圧迫します。月に1回の見直し日を、カレンダーに登録して忘れないようにします。
保存場所も決めておきます。パソコンの中だけだと、外出先で送れません。クラウド上のフォルダに最新版を1本だけ置き、古い版は別のフォルダに移します。送るファイルは常にそこから取り出す決まりにすると、版違いを防げます。
反応の表に残す項目は、渡した日・相手の業種・その後の連絡の有無の3つで足ります。分析が目的ではなく、次の見直しの材料にするための記録です。見直し日には、この表を見ながら、料金と実績のどこを直すかを決めます。



渡す相手に合わせて、毎回直したほうがよい資料になるのではないですか?



直し続けると本業の時間が減ります。変更は見直し日にまとめて、日々は使う回数を増やすほうに時間を使いましょう。
打ち合わせで資料を使うときの渡し方
打ち合わせでは、資料を全部読み上げません。1ページ目だけを一緒に見て、残りは持ち帰ってもらう使い方が基本です。
進め方は、次の3つの手順です。
- 1ページ目を開き、見出しと結論を読み合わせる
- 相手の悩みを聞き、関係するページだけをめくる
- 資料を渡し、聞きたいことをあとから連絡してもらう
オンラインの打ち合わせでも、画面共有で同じ進め方ができます。資料は主役ではなく、会話の支えです。読み上げるより、相手の話を聞く時間を増やす使い方を意識してください。
資料を渡したあとは、相手の社内で資料が回る時間が生まれます。その間にこちらから売り込む連絡を重ねると、印象を悪くしかねません。次に連絡する時期は、打ち合わせの場で決めておくと気楽です。
なお初めて会う相手との打ち合わせでは、資料の使い方以外にも準備があります。当日の持ち物や聞くべきことの整理は、フリーランスが初めての相手と臨む打ち合わせの準備の記事で詳しく扱っています。



打ち合わせの前にメールで資料を送る場合も、同じ考え方ですか?



同じです。送る場合は1ページ目で結論が伝わることがより重要になります。残りのページは、会ったときの補足として位置づけてください。
まとめ
- サービス紹介資料は7ページ構成で、半日あれば形にできます
- 1ページ目には「誰のどんな悩みを解決するか」の見出しと結論を書きます
- 直すのは料金と実績だけと決めると、資料を使い回せます
- 打ち合わせでは1ページ目で会話を始め、残りは持ち帰ってもらいます
さっそく、7ページの構成表を見ながら、1ページ目の見出しと結論を紙に書き出してみてください。半日後には、初めて会う相手に渡せる資料が手元にあります。
よくある質問
- パソコンに資料作成ソフトが入っていないのですが作れますか?
-
作れます。この記事で紹介したCanvaのように、無料プランで始められるツールがあります。テンプレートに文章を当てはめるだけでも、資料は形になります。
- 料金は資料に書くべきですか?
-
書く場合は、幅を持たせた目安の形にします。書かない場合は、その理由と見積もりの流れを1文添えます。どちらにしても、相手が次に動きやすい書き方を選んでください。
- 7ページより少ない枚数でもよいですか?
-
構いません。7つの要素がそろっていれば、5ページでも成立します。枚数を合わせるより、足りない要素を補うことを優先してください。
参考文献・出典
最終更新 2026-10-07/起業者数のデータは2022年調査時点、ツールの料金情報は2026年8月確認時点
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