チャットに数行だけ書いて外注先へ依頼すると、上がってきた提出物が想定と違い、修正の指示を何往復もすることがあります。最後は自分で手を入れ直し、依頼した時間がまるごと消えていきます。
これが続くと、自分の説明が下手なのだと思い始めます。しかし、足りないのは説明の才能ではなく、渡す情報の型です。
この記事では、手戻りの原因を3つに整理し、それぞれを防ぐ項目を1枚の指示書にまとめます。
書くのは目的と背景、完了基準、作業内容、提出形式、納期と中間確認日、報酬と支払期日、連絡手段と返答の目安、判断を委ねる範囲と禁止事項の8項目です。
目指すのは分厚い仕様書ではなく、2回目からの記入が差分で終わる指示書です。
- 外注の手戻りは、前提の欠落・完了基準の曖昧さ・提出形式の不一致の3つに絞れます
- 毎回配る指示書に書くのは8項目だけで、契約書で決める条項は混ぜません
- 空欄テンプレートと記入例、チャットに流す3行、差し戻しの文例をそのまま使えます
- 役員1人・従業員ゼロでも取引条件の明示は義務で、8項目と冒頭の3行で満たせます
一人社長の外注が手戻りする原因
相談者毎回同じところで修正が戻ってくるのは、私の説明が下手だからでしょうか?



原因は3つに分かれます。前提・完了基準・提出形式のどれが抜けたかで見ます。
どれも相手の能力ではなく、渡し忘れた情報の種類です。
| 原因 | よくある症状 |
|---|---|
| 前提の欠落 | 成果物の使い道や読者像が共有されず、方向性ごと違うものが届く |
| 完了基準の曖昧さ | 「もう少し良くしたい」が続き、どこで終わるかが決まらない |
| 提出形式の不一致 | 中身は合っているのに、形式や提出先が違って作業が戻る |
直近の手戻り1件を、この3つのどれかに当てはめてみてください。多くの場合はどれか1つに絞れます。絞れれば、直す項目も1つです。
行政の措置は明示漏れと支払遅延が上位
条件を言葉にしないまま進める危うさは、公的な集計にも表れています。公正取引委員会が公表したフリーランス法(フリーランス・事業者間取引適正化等法)の運用状況から、違反行為の上位3類型を並べます。
| 違反行為の類型 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 期日における報酬の支払義務違反 | 1,135件 | 41.6% |
| 取引条件の明示義務違反 | 1,126件 | 41.3% |
| 買いたたき | 250件 | 9.2% |
割合の分母は、措置1,552件(勧告10件と指導1,542件)を違反行為の類型別に数えた2,727件です。業種別では、措置1,552件のうち情報通信業が37.0%で最も多くなっています。発注者全体の傾向ではなく、行政が措置した事案に限った数字です。
出典:公正取引委員会 令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況
それでも上位2つは、どちらも指示書で防げる項目です。明示は依頼を出すときに、支払期日は報酬欄で決まります。このうち条件の明示は、従業員ゼロの発注者にも課されます。
外注指示書には何を書く?8項目の型



指示書の項目は、どこまで増やしてよいのでしょうか?



8項目で止めます。契約書で一度決める条項は指示書に入れません。
8項目に残す基準は2つあります。3つの原因を直接防ぐ項目だけを置くことと、契約書で決める条項は入れないことです。
業務委託契約書は、損害賠償や知的財産権の帰属、秘密保持、再委託の可否を取引の前提として一度決める書面です。指示書は依頼のたびに配り、毎回書き換わる作業の指示だけを持ちます。更新の頻度が違う書面は、混ぜると両方が重くなります。
項目を1つ足すたびに、書くのが面倒になります。面倒な指示書は、そのうち開かれなくなります。少額の外注では、埋まらない完璧な指示書より、埋まる8項目のほうが役に立ちます。
8項目と、それぞれが防ぐ原因
| 番号 | 項目 | 書く内容 | 防ぐ原因 |
|---|---|---|---|
| 1 | 目的と背景 | 使い道、見る人、今回判断したいこと | 前提の欠落 |
| 2 | 完了基準 | 第三者が○×を付けられる合格ライン | 完了基準の曖昧さ |
| 3 | 作業内容 | やること、やらないこと | 完了基準の曖昧さ |
| 4 | 提出形式 | ファイル形式、命名、提出先 | 提出形式の不一致 |
| 5 | 納期と中間確認日 | 納品の日時、途中で見せてもらう日 | 完了基準の曖昧さ |
| 6 | 報酬と支払期日 | 金額、含む範囲、請求書、支払日と方法 | 前提の欠落 |
| 7 | 連絡手段と返答の目安 | 使うツール、返信までの目安時間 | 前提の欠落 |
| 8 | 判断を委ねる範囲と禁止事項 | 任せる判断、触らないでほしい部分 | 前提の欠落 |
完了基準を2番目に置いているのは、終わりが決まると作業の範囲が決まるからです。番号はそのまま差し戻すときの目印に使うので、テンプレートも記入例もこの並びで固定します。
前提の欠落を防ぐ項目が最も多いのは、抜けやすいのが前提だからです。作業内容や納期は自然と書くのに、使い道と判断の範囲は頭の中に置いたままになりがちです。
行政の措置で最多だった報酬の支払遅延は、6の「報酬と支払期日」で防ぎます。
追加したいことが出たときは、新しい項目を作らず、8項目のどこかに1行だけ足します。
そのまま使える指示書テンプレート例



テンプレートは、そのままコピーして使えますか?



使えます。空欄版をコピーしてドキュメントに貼るだけで、登録も不要です。
空欄のテンプレート、ライターの記入例、報酬欄に足す行、他の職種で変える項目の順に並べます。
例は特定の取引先を想定したものではありません。金額は記入の細かさを示すためのサンプルで、相場ではありません。
空欄のまま全文コピーするテンプレート
下の枠の中を選択してコピーし、Googleドキュメントに貼ってください。貼るときは Ctrl+Shift+V(Macは Command+Shift+V)でプレーンテキストとして貼ると、記事側の書式を持ち込みません。
自分のドライブに置く空欄のテンプレート(以下「マスター」)は、URLの末尾の /edit を /copy に書き換えたリンクで複製します。外注先に渡すのは、記入済みファイルの閲覧用リンクです。マスターのリンクを送ると、相手側に空のファイルが増えるだけになります。
宛先:〇〇様
発注者:〇〇(屋号または法人名)
委託日:〇月〇日(この依頼を出した日)
件名:【依頼】〇〇の作成(納品:〇月〇日)
1. 目的と背景
この成果物は〇〇に使います。見る人は〇〇です。
今回判断したいのは〇〇です。
2. 完了基準
〇〇形式で提出され、〇〇が〇〇であれば完了です。
確認者は〇〇、確認は〇月〇日までに完了します。
修正は〇回まで、再提出は指摘から〇営業日以内です。
3. 作業内容
やること=〇〇
やらないこと=〇〇(こちらで対応します)
4. 提出形式
〇〇形式のファイルを「〇〇」という名前で置いてください。
置き場所は〇〇(共有フォルダのURL)です。
プラットフォーム経由の場合はサイトのファイル機能で提出してください。
5. 納期と中間確認日
納品:〇月〇日〇時
中間確認:〇月〇日に〇〇だけ先に見せてください
6. 報酬と支払期日
〇〇円(税込、〇〇を含む。〇〇は別途実費)
修正〇回を超える場合は1回〇〇円で追加
〇月〇日に〇〇でお支払いします
請求書:〇月〇日までに〇〇へ提出してください
インボイス登録:有(番号〇〇)または無(無でも税込金額は据え置きます)
源泉徴収:〇円を差し引き、〇円を振込
プラットフォーム経由の場合:仮払い済みで、請求書と振込は不要です
7. 連絡手段と返答の目安
連絡は〇〇でお願いします。
平日〇時までのご連絡には当日中に返します。
8. 判断を委ねる範囲と禁止事項
お任せ:〇〇
変更前に相談:〇〇
使える数値:〇〇(出典URLを示せるものに限ります)
記入例で書く細かさを確かめる
同じテンプレートを埋めた例が、下の枠です。増えているのは形容詞ではなく、数と形式と期限だけです。
宛先:〇〇様
発注者:〇〇(屋号または法人名)
委託日:10月5日
件名:【依頼】自社サイトのコラム記事1本(納品:10月15日)
1. 目的と背景
問い合わせ前に比較検討している中小企業の担当者に読んでもらう記事です。
資料請求の前段として、検討の判断材料を渡すことが狙いです。
2. 完了基準
Googleドキュメントで提出され、本文3,500字程度(±10%)、H2が5〜8本、各見出しの下に具体例か数値が1つ以上あれば完了です。
確認者は発注者本人、確認は10月16日までに完了します。
修正は2回まで、再提出は指摘から3営業日以内です。
3. 作業内容
やること=構成案と本文の執筆
やらないこと=画像の選定、内部リンクの設定(こちらで対応します)
4. 提出形式
Googleドキュメントで、タイトルに記事テーマを入れてください。
置き場所は共有フォルダで、原稿には編集権限を付けてください。
5. 納期と中間確認日
納品:10月15日18時
中間確認:10月9日に構成案(見出しのみ)を共有してください
6. 報酬と支払期日
3,500字で35,000円(税込、構成案込み。取材が必要な場合は別途相談)
修正2回を超える場合は1回5,000円で追加
10月末締め、翌月15日に銀行振込でお支払いします
請求書:10月末までに共有フォルダへ提出してください。
インボイス登録:有無をお知らせください(無でも税込金額は据え置きます)。
源泉徴収:3,573円を差し引き、31,427円を振込
7. 連絡手段と返答の目安
連絡はチャットでお願いします。
平日17時までのご連絡には当日中に返します。
8. 判断を委ねる範囲と禁止事項
お任せ:見出しの言い回し、事例の選び方
変更前に相談:想定読者、記事テーマ
使える数値:公的機関の資料で出典URLを示せるものに限ります
委託日10月5日から納品10月15日までが10日間で、中間確認はその4日目です。折り返しより前に一度見せてもらう形にしておくと、方向性のズレを作り直せる時間が残ります。
報酬欄に足す請求書と税の行
報酬欄は金額だけでは足りません。締め払いは相手からの請求書を前提に動くので、提出期限を書かないと支払事務が止まります。
インボイスについては、相手の登録の有無を1行で確認します。免税事業者からの仕入れで控除できる割合は段階的に縮んでいるため、こちらの実負担は相手の登録状況で変わります。
それでも税込金額は据え置きます。登録がないことを理由に一方的に単価を下げたり取引を止めたりすると、優越的地位の濫用として独占禁止法上問題となり得ます。
源泉徴収については、法人が個人のライターやデザイナーに原稿料やデザイン料を払うときに、10.21%を差し引いて翌月10日までに納めます。35,000円の原稿料なら、振込額は31,427円になります。
動画編集やオンラインアシスタントは所得税法204条の列挙に入らないので、原則として差し引きません。相手が法人の場合も不要です。
クラウドソーシングなどのプラットフォームを経由するときは、発注時にサイトへ仮払いし、受注者への支払時期と手数料は規約で決まります。
請求書も振込も不要で、やりとりと納品はサイト内のメッセージとファイル機能で行います。外部ツールへの誘導が制限される場合があるので、提出形式と連絡手段の項目もそれに合わせます。
他の職種で変える項目
職種が変わっても、書き換えるのは完了基準・作業内容・提出形式・報酬の4項目です。ほかの項目は空欄版と同じ書き方で足ります。制作物が増えるほど、報酬に含む範囲と編集可能データの扱いがトラブルになりやすくなります。
バナー3サイズ
完了基準=PNGと編集可能データで提出、3サイズとも支給コピーが収まる(確認は10月14日まで、修正2回、再提出は2営業日以内)
作業内容=1200×630と1080×1080と300×250の3サイズ(コピー作成と広告の入稿はこちらで対応します)
提出形式=PNGとFigmaデータを「bnr_サイズ_日付」で共有フォルダへ
報酬=30,000円(税込、3サイズと修正2回を含む。有料素材費は実費)
解説動画1本
完了基準=1080pのMP4で提出、尺8〜10分、冒頭15秒に要約テロップ(確認は10月20日まで、修正2回、再提出は3営業日以内)
作業内容=カット編集、テロップ、BGMと効果音、サムネイル用の静止画(台本とサムネイルのデザインと公開作業はこちらで対応します)
提出形式=MP4を「動画タイトル_v1」で共有フォルダへ(編集用プロジェクトファイルも使用素材ごと同じフォルダへ)
報酬=35,000円(税込、修正2回とBGM選定を含む。素材費は実費)
オンラインアシスタント
完了基準=受信から1営業日以内に定型文A〜Cで一次返信(対応件数を毎週金曜までにシートへ記入、確認は毎週月曜)
作業内容=問い合わせの一次対応と記録(判断が必要な返信はこちらで対応します)
提出形式=共有シートの当週タブに記入
報酬=月〇〇円(税込、週〇件まで。超過分は1件〇〇円)
職種ごとに足す行と書きすぎる行
職種ごとに、足す行と、書きすぎると相手の手が止まる行をまとめます。
| 職種 | 足す行 | 書きすぎる行 |
|---|---|---|
| ライター | 参考記事のURL、使える数値の範囲、想定読者とキーワード | 語尾の指定、段落ごとの文字数 |
| デザイナー | 参照イメージと参照する要素、入稿先の仕様 | フォントと配色の全指定 |
| 動画編集 | 尺と書き出し設定、素材の置き場と命名、テロップのルール | カット単位の秒数指定 |
| アシスタント | 止めて確認する基準、例外時の連絡先と期限、使うツールと権限 | 手順の全文スクリーンショット |
足す行はどれも「何を参照するか」で、書きすぎる行はどれも「どう作るか」です。定型事務の任せ方はオンラインアシスタントの活用記事で扱っています。
指示書の渡し方と使い回しの文例



指示書を作ったあと、チャットには何を流せばよいですか?



依頼・納期・完了の3行だけです。本文は閲覧用リンクで渡します。
指示書の本文をチャットに貼ると、長文で流れていき、どこを見ればよいか分からなくなります。
指示書を作る目的は、チャットに書く内容を3行に固定することでもあります。
チャットに流す3行の文例
毎日の依頼がチャットで終わる場面では、この3行が本体になります。納期と完了だけは、リンクを開かなくても読める位置に出します。
【空欄版】
①依頼=〇〇の作成
②納品=〇月〇日〇時
③完了=〇〇なら完了(修正〇回まで)
指示書はこちら:〇〇(閲覧用リンク)
【記入済み版】
①依頼=コラム記事1本(構成案+本文)
②納品=10月15日18時
③完了=3,500字程度、H2が5〜8本、各見出しに具体例か数値1つ以上
指示書はこちら:(閲覧用リンク)
既存の相手に切り替えを伝える文例
初めての相手なら、指示書を渡すこと自体が丁寧さとして受け取られます。一方、これまで数行で頼んできた相手に急にリンクを渡すと、管理が厳しくなったのかと身構えられることがあります。
既存の相手には、条件の通知ではなく合意の確認として送ります。
いつもありがとうございます。
確認の往復でお待たせしていたので、依頼の形を1枚に固定しました。
これまでと内容は変わりません。目的と完了の基準を先にお伝えする形です。
・依頼のたびに閲覧用リンクを送ります(チャットには3行だけ流します)
・修正2回、再提出3営業日を目安にしています
・これを超える分は、1回〇〇円で別途お願いできますか
・この条件で問題ないか、お返事をいただけると助かります
切り替えは次回の依頼分からにします。ご希望があれば調整します。
条件を厳しくする意図がないことは、最初の1回だけ言葉にしておくと伝わります。
初回と定例と緊急で省く項目を決める
同じ指示書を、初回・定例・緊急の3つの場面で使い回します。省いてよい項目をあらかじめ決めておくと、2回目以降の記入は差分だけで終わります。
| 項目 | 初回 | 定例 | 緊急 | チャット3行 |
|---|---|---|---|---|
| 1 目的と背景 | 書く | 前回と同じなら省略 | 1行だけ書く | 入れない |
| 2 完了基準(明示必須) | 書く | 固定文をコピペ | 書く | 入れる |
| 3 作業内容(明示必須) | 書く | 差分だけ書く | 書く | 入れる |
| 4 提出形式(明示必須) | 書く | 固定文をコピペ | 固定文をコピペ | 入れない |
| 5 納期と中間確認日(明示必須) | 書く | 書く | 納期は書く | 入れる |
| 6 報酬と支払期日(明示必須) | 書く | 書く | 書く | 入れない |
| 7 連絡手段と返答の目安 | 書く | 省略可 | 書く | 入れない |
| 8 判断を委ねる範囲と禁止事項 | 書く | 変更時のみ | 変更時のみ | 入れない |
明示必須の項目は、毎回同じ文面でも転記します。理由は「フリーランス法の条件明示と指示書」で説明します。後から明示してよいのは、内容が定められないことに正当な理由がある未定事項だけで、「毎回同じだから」は理由になりません。定例の依頼でも、固定文をコピペして入れます。
初回に書くのは、冒頭の4行(宛先・発注者・委託日・件名)と8項目です。2回目以降に手を入れるのは、委託日と件名、納期、報酬、作業内容の差分だけになります。
完了基準と検収ルールの書き方



完了基準は、どこまで細かく書けばよいのでしょうか?



第三者が○×を付けられる数と形式までです。6つの要素を入れます。
8項目のうち、手戻りを最も減らせるのは完了基準です。ここを「読みやすく」「いい感じに」で出すと、提出物を見てから基準を考えることになり、そこから往復が始まります。
完了基準に入れるのは、判定条件・提出形式・確認者・確認完了日・修正回数の上限・再提出の期限の6つです。
○×を決めているのは判定条件です。「H2が5〜8本、各見出しに具体例か数値が1つ以上」のように数と形式で書ければ、第三者が見ても結論は同じになります。
確認完了日を入れるのは、フリーランス法で、検査をする場合の明示事項とされているからです。
抽象語を○×が付く文に書き換える
| 職種 | 書き換え前 | 書き換え後(判定条件) |
|---|---|---|
| ライター | 読みやすく書いてください | ・本文3,500字程度(±10%)・1文60字以内・H2は5〜8本・数値は出典URLを示せる公的資料のみ |
| デザイナー | おしゃれなバナーでお願いします | ・1200×630と1080×1080と300×250・PNGと編集可能データ・文字は支給コピーのみ |
| 動画編集 | テンポよく編集してください | ・尺8〜10分・1080pのMP4・冒頭15秒に要約テロップ・BGMは支給フォルダ内のみ |
| アシスタント | 問い合わせ対応をお願いします | ・受信から1営業日以内に定型文A〜Cで一次返信・該当しない内容は返信せず共有・件数は週次でシートに記入 |
右の列は長くなります。それでも書くのは一度で、2回目からは数字を変えるだけです。判定条件を長く書いたほうが、やり取りの往復は減ります。
修正回数と再提出日数の決め方
空欄に入れる回数と日数は、相場ではなく、相手の採算と自分の確認時間から逆算します。
| 決める項目 | 少額の外注での決め方(本記事の推奨) | そう決める理由 |
|---|---|---|
| 修正回数 | 2回まで。3回目以降は時間単価か固定額で追加 | 報酬が小さいほど、往復1回が相手の採算を削る |
| 再提出の期限 | 指摘から2〜3営業日 | 相手は並行案件を持っている。当日や翌日は他案件を押しのける |
| 中間確認日 | 納期までの日数の折り返しより前(10日なら4日目) | 折り返し後にズレが出ると、作り直す時間が残らない |
| 追加費用の形 | 1回いくら、または30分いくらを先に書く | 都度交渉にすると、こちらも相手も言い出しにくい |
回数を書くのは相手を縛るためではありません。回数内の指摘は遠慮なく出せるようになります。
無償の修正に数えてよいのは、基準未達など相手の責任による再提出と、報酬に含むと先に明示した範囲までです。こちらの都合で目的や読者像を変えた分は、回数に数えず別途費用を持ちます。
役員を増やすか従業員を雇うと、フリーランス法で義務の多い「特定業務委託事業者」に該当します。その状態で同じ相手への委託が1か月以上になると、相手に責任がないやり直しを無償でさせる行為は禁止行為に当たります。
基準に届かなかったときの差し戻し
手戻りの負担が大きいのは、違うものが届いた後です。感想を書いて返すと往復が始まるので、項目の番号と該当箇所だけを指して戻します。
ご提出ありがとうございます。
項目2(完了基準)が未達のため、1回目の修正としてお戻しします。
未達の箇所:H2が3本(基準は5〜8本)
うち2本に具体例と数値が入っていません
ほかは基準を満たしています。
10月21日18時までに再提出をお願いします。
2回の修正を使い切っても届かない場合の扱いは、提出物を見る前に決めておきます。報酬欄に次のどちらかを先に書きます。
- そのまま受領して支払う:約束どおり支払い、次回から依頼内容か依頼先を見直す
- 追加費用で3回目を依頼する:報酬欄の「1回〇〇円」で発注し、直す箇所を項目の番号で指定する
3回目を出すときは、追加分の給付内容・報酬・支払期日を1行で再明示します。当初の明示内容を変える発注だからです。
支払いを保留する形は選びません。
フリーランス法の条件明示と指示書



役員1人・従業員ゼロの会社にも、法律上の義務はあるのでしょうか?



取引条件の明示は課されます。指示書の8項目に冒頭の3行を足せば満たせます。
外注先が、従業員を使用しない個人か、代表者1人だけで従業員もいない法人である場合、取引条件の明示は法律上の義務です。公正取引委員会のQ&Aは、この相手を「特定受託事業者」と呼びます。
相手が該当するかは、こちらからは見えません。初回の依頼で、従業員を雇っているかどうかを、宛先を確認するついでに1行たずねます。
明示することとされている事項は8つで、口頭での伝達は認められません。
自分と相手がどちら側に当たるか
義務の数は、相手ではなく自分の会社の体制で変わります。役員が自分1人で従業員がいない体制なら、求められるのは条件の明示だけです。
明示の義務は3条通知と呼ばれます。フリーランス法第3条に基づき、明示すべき事項を書面または電磁的方法(メールやチャットなど)で相手に示すことを指します。
義務が増える時点は2つあります。役員をもう1人入れたときと、週20時間以上で31日以上続く見込みの人を雇ったときです。スポットの外注先は従業員に数えません。
根拠として、Q&Aは特定業務委託事業者を「法人であって、二以上の役員があり、又は、従業員を使用するもの」と定義しています。
| 発注者の区分 | 課される義務 |
|---|---|
| 役員1人・従業員ゼロ | 取引条件の明示だけ |
| 役員2人以上、または従業員を使用 | 明示、報酬の支払期日、募集情報の的確表示、ハラスメント対策の体制整備 |
| 上に加えて同じ相手への委託が1か月以上 | 7つの禁止行為 |
| 上に加えて6か月以上 | 育児介護等との両立への配慮、中途解除と不更新の事前予告と理由開示 |
ハラスメント対策と募集情報の的確表示には、委託期間の条件がありません。特定業務委託事業者になった時点で、単発の依頼でも課されます。
明示事項は指示書の8項目と冒頭3行で埋まる
| 明示することとされている事項 | 指示書のどこで兼ねるか |
|---|---|
| 発注者とフリーランスの名称 | 冒頭の「宛先」と「発注者」 |
| 業務委託をした日 | 冒頭の「委託日」 |
| 給付の内容 | 3 作業内容 |
| 給付を受領する期日、役務の提供を受ける期日 | 5 納期と中間確認日 |
| 給付を受領する場所、役務の提供を受ける場所 | 4 提出形式(提出先のURL) |
| 検査を完了する期日(検査をする場合) | 2 完了基準の「確認は〇月〇日まで」 |
| 報酬の額および支払期日 | 6 報酬と支払期日 |
| 報酬の支払方法(現金以外で支払う場合) | 6 報酬と支払期日 |
もとの8項目では埋まらないのが3つあります。双方の名称、業務委託をした日、検査を完了する期日です。だから空欄版の冒頭に宛先・発注者・委託日の3行を置き、完了基準に確認完了日を入れています。
中間確認日と検査完了期日は別物です。前者は途中で見せてもらう日、後者はこちらが確認を終える日です。件名の日付は納品日なので、委託日の代わりにはなりません。
支払期日60日は誰の義務か
60日以内という上限日数は、特定業務委託事業者の義務です。役員1人・従業員ゼロのうちは、法律上この日数は課されません。
それでも短く固定しておく理由が3つあります。
- 自分が受注側に回ったときは、発注者に60日以内の支払いを求める側になる
- 役員を増やすか人を雇った時点で、自分にも課される
- 支払日が決まっていない取引は、相手の催促と自分の記憶に依存する
起算日は給付を受領した日です。役務の提供を受ける委託では、役務の提供を受けた日が起算日になります。
「月末締め・翌月15日払い」なら、月初に受け取った分でも45日前後で収まります。よくある「月末締め・翌月末払い」は、月初に受け取った分が60日前後になるので余裕がありません。
支払日を書かずに始める取引は、行政の措置で上位2つを占めた項目を、どちらも空けたまま進めることになります。
明示の方法と記録の残し方
明示は、電子メール、チャットツール、SMSなど、受信者を特定して送信する方法が認められています。明示事項を載せたウェブページのURLをメッセージに書く方法も認められています。
指示書をGoogleドキュメントに置き、リンクをチャットで送れば、明示の方法も満たせます。
ただし条件が付きます。相手から書面の交付を求められたときは、遅滞なく書面を渡します。リンクが開けなくなった場合も同じです。
送った時点の内容を、スクリーンショットかPDFで双方に残します。相手に渡す版は閲覧専用にして、書き換えは自分のマスター側で行います。
発注側として判断に迷ったときは、公正取引委員会の相談窓口か、中小企業庁の取引かけこみ寺(旧・下請かけこみ寺)に相談できます。フリーランス・トラブル110番は受注者側の窓口で、発注側の相談は対象外とされています。
AIに指示書の抜けを点検させる



指示書づくりは、生成AIに任せてもよいのでしょうか?



抜けの点検と文の圧縮までです。目的と完了基準は人が書きます。
指示書づくりを生成AIに手伝わせると、空欄を埋める時間は短くなります。ただし、判断が入る項目は人が書き、形を整える作業だけAIに回します。
任せる範囲と人が書く範囲
| AIに任せてよい | 人が書くしかない |
|---|---|
| 指示書の構成の叩き台づくり | 目的と背景(成果物の使い道) |
| 8項目のうち抜けている項目の点検 | 優先順位(何を捨ててよいか) |
| 冗長な文の圧縮、用語の統一 | 完了基準の判定条件 |
| 抽象語の言い換え候補出し | 判断を委ねる範囲と禁止事項 |
目的や優先順位は、事業の事情を知っている人しか決められません。ここを埋めさせると、もっともらしいだけの前提が入り、相手は読んだのに判断できない状態になります。
抜けを点検させるプロンプト
点検用の短いプロンプトが1つあれば足ります。
次の外注指示書を読み、記載が無い項目を挙げてください。
見るのは次の8項目です。
目的と背景、完了基準、作業内容、提出形式、納期と中間確認日、報酬と支払期日、連絡手段と返答の目安、判断を委ねる範囲と禁止事項。
第三者が○×を付けられない表現も、箇条書きで指摘してください。
書き足しはせず、指摘だけにしてください。
書き足しを禁じるのが要点です。足してもらうと、確認していない前提が混ざったまま相手に届きます。
取引先の個人情報、未公開の見積もりや契約内容、交渉経過は入力しません。理由は2つあります。まず、入力したデータを学習に使う設定のサービスがあります。次に、取引先の個人情報を外部サービスに入れる行為は個人情報の取扱いの委託に当たり得て、委託先の管理が必要になります。
出力はそのまま送らず、指摘された項目を自分の言葉で埋めてから渡します。ツールの選び方はAI業務効率化ツールの比較記事にまとめています。
指示書を更新していく手順



一度作った指示書は、どう更新していけばよいですか?



手戻りが起きた日に1行足します。月1回、使わない行を削ります。
指示書を作って終わりにすると、同じ手戻りがいずれ戻ってきます。指示書は、手戻りが起きるたびに更新していくものです。
更新するのはマスターだけです。相手に渡した複製は閲覧専用のまま保存します。取引ごとに明示した内容が後から書き換わると、何を明示したかが残りません。
手戻り1件を1行に変える
- 手戻りが起きた日に、原因を前提の欠落・完了基準の曖昧さ・提出形式の不一致のどれかに振り分ける
- マスターの該当する項目に1行だけ足す(新しい項目は作らない)
- 更新履歴に日付、足した行、きっかけを1行で残す
- 次の依頼では、マスターを複製してから記入する
- 相手に渡す複製は閲覧専用にして、渡した時点をPDFで保存する
振り分けを先にするのは、感想ではなく原因で記録を残すためです。「もっと丁寧に伝える」では次に何も変わりませんが、「提出形式の不一致だったのでファイル命名のルールを1行足した」なら次回に生かせます。
増え続けないように月1回削る
追記だけを続けると、いずれ読まれない指示書になります。月に1回、更新履歴を上から眺めて、実際には使っていない行を消します。
判断の目安は、直近1か月の依頼で一度も参照しなかった行は消すというものです。消して困ったときは、手戻りが起きた日にまた足します。
まとめ
- ✓ 原因は3つに振り分ける:前提の欠落・完了基準の曖昧さ・提出形式の不一致のどれかに決めてから、直す項目を1つ選びます
- ✓ 書くのは8項目まで:目的と背景から禁止事項までの8項目で止め、契約書で決める条項は指示書に持ち込みません
- ✓ 今日出す1件から始める:完了基準と支払期日の1行だけを足して送れば、往復の多い依頼から手戻りが減っていきます
- ✓ 渡し方と更新の仕方を固定する:閲覧用リンクとチャット3行で渡し、手戻りが起きた日にマスターへ1行だけ足します
空欄テンプレートはプレーンテキストで自分のドライブに貼って使います。既存の相手には、切り替えの一言を添えてから送ります。
依頼の設計から見直す段階なら、外注マネジメントの進め方をまとめた記事が次に読む1本です。
よくある質問
- 支払期日は何日以内に設定すればよいですか?
-
60日以内という上限は特定業務委託事業者(役員2人以上または従業員を使用する発注者)の義務で、役員1人・従業員ゼロの発注者には課されません。起算日は給付を受領した日で、役務の委託では役務の提供を受けた日です。実務では「月末締め・翌月15日払い」のように短く固定しておくと、自分が受注側に回ったときや将来該当したときにそのまま使えます。
- 役員1人・従業員ゼロの法人も、フリーランス法の対象になりますか?
-
公正取引委員会のQ&Aでは、特定業務委託事業者は「法人であって、二以上の役員があり、又は、従業員を使用するもの」と定義されています。役員1人・従業員ゼロなら該当せず、求められるのは3条通知による取引条件の明示だけです。役員を追加したとき、または週20時間以上かつ31日以上続く見込みの人を雇ったときに該当します。
- 修正2回で完了基準に届かなかったら、どうすればよいですか?
-
まず項目の番号と該当箇所を指して戻します。2回を使い切っても未達なら、そのまま受領して支払うか、報酬欄に先に書いた追加費用で3回目を依頼するかの2択を、提出物を見る前に決めておきます。3回目を出すときは、追加分の給付内容・報酬・支払期日を1行で再明示します。
- 業務委託契約書と指示書は、どう使い分けますか?
-
契約書は損害賠償や知的財産権の帰属、秘密保持、再委託の可否を取引の前提として一度決める書面です。指示書は依頼のたびに配り、毎回書き換わる作業の指示だけを持ちます。更新の頻度が違う書面なので混ぜません。
- 指示書はどのツールで渡すのが良いですか?
-
条件の明示はメール、チャットツール、SMS、明示事項を載せたウェブページのURLのいずれでも認められています。閲覧用リンクで渡し、送った時点の内容をスクリーンショットかPDFで双方に残すと、後から内容を確認できます。相手から書面の交付を求められたときは、遅滞なく書面を渡します。
参考文献・出典
- 公正取引委員会 令和7年度におけるフリーランス・事業者間取引適正化等法第2章の運用状況
- 公正取引委員会 フリーランス法特設サイト
- 公正取引委員会 フリーランス法に関するQ&A
- 公正取引委員会 免税事業者及びその取引先のインボイス制度への対応に関するQ&A
- 国税庁 原稿料や講演料等を支払ったとき
- 中小企業庁 フリーランス・事業者間取引適正化等法
- 厚生労働省委託 フリーランス・トラブル110番
最終更新: 2026-10-07/引用データは令和7年度公表分および2026年10月時点の公表内容
この記事を読んだ方におすすめ
外注の進め方を土台から整えたい一人社長へ


事務作業を任せて自分の時間を作りたい方へ


はじめて請求書を発行する個人事業主の方へ


職種ごとのポートフォリオの型を知りたい方へ


どのAI業務ツールから使うか迷う一人社長へ











