「器は用意したのに、中身が埋まらない」。作品欄は作ったのに、プロフィールやスキルが空欄で止まっていないでしょうか。
手持ちの作品は出来にばらつきがある。全部載せるか良いものだけに絞るか。掲載の基準を調べても、記事ごとに数字が違い迷う。受注案件は秘密保持契約があり、載せてよいのか判断がつかない。
この記事は正解ではなく、あなたの状況にそのまま当てはめられる形で、判断基準・対応策をまとめました。
- ポートフォリオに載せる必須7項目と、それぞれの埋め方の一言
- 採用選考と発注検討で変わる、見せ方と優先項目の違い
- 載せる作品数を4つの質問で決める方法と、並べる順番
- 守秘義務がある案件の扱いと、掲載許諾を頼むメールの例文
ポートフォリオに載せる必須7項目と任意項目
相談者作品を並べれば、ポートフォリオは完成ですか?



作品に加えてプロフィールや料金など7項目をそろえると、相手が短い時間で判断しやすくなります。
ポートフォリオに最も足りないのは、作品より「作品を取り巻く情報」です。載せる必須項目は、次の7つです。プロフィール、スキルと使用ツール、実績作品、制作情報、作品の説明文、料金と対応範囲、そして連絡先です。
ポートフォリオは、作品を並べるだけの場所ではありません。相手が短い時間で「この人に頼めそうか」を判断する資料です。だから、作品より、作品を取り巻く情報のほうが不足しがちです。
| 項目 | 役割 | 埋め方の一言 |
|---|---|---|
| プロフィール | 何者かを一言で伝える | 職種・対応領域・稼働形態を2〜3行で |
| スキルと使用ツール | できることの範囲を示す | 実務で使えるものだけを書く |
| 実績作品 | 判断の中心になる | 質で選び、狙う案件に近い順に並べる |
| 制作情報(担当範囲・期間・体制) | 誤解を防ぐ | 一人か共同か、担当した工程を明記 |
| 作品の説明文 | 過程と工夫を伝える | 課題・担当・工夫・結果の順で書く |
| 料金と対応範囲の目安 | 問い合わせ前の不安を減らす | 「◯円〜」と範囲、対応外も書く |
| 連絡先と問い合わせ導線 | 次の行動につなげる | フォームかメール、返信の目安を添える |
つまずきやすいのは、作品以外の6項目です。作品だけを並べて満足してしまい、プロフィールや料金が空欄だと、見た人は連絡してよいのか判断できません。まずはこの表の空欄を埋めることが、最初の一歩になります。
掲載形式によって、載せられる情報量は変わります。Webサイトは量も更新も自由で、PDFは提出向きで一覧性が高く、紙は対面で渡すときに向きます。器に応じて、載せる項目の優先順位を決めます。
任意項目は裏付けがある時だけ載せる
受賞歴・資格・所属団体・お客様の声などは、あれば信頼を後押しします。ただし、載せてよいのは実際に事実がある場合だけです。
持っていない資格や、実態のない監修表記を足すのは、経歴の偽装にあたります。裏付けのない権威付けは、一度見抜かれると全体の信頼を崩します。
任意項目が用意できないなら、無理に足さず、実績作品と説明文の質で見せれば十分です。
採用選考と発注検討で載せる中身は変わる



応募用と直接取引用で、同じものを使い回してよいですか?



見る人と目的が違うので、提出先を1つ決めて優先する項目を入れ替えるのがおすすめです。
見る人・かける時間・判断の目的が違えば、載せるべき項目も変わります。同じポートフォリオでも、採用選考と発注検討では見せ方を変える必要があります。
| 観点 | 採用選考(応募先の担当者) | 発注検討(直接取引の発注者) |
|---|---|---|
| 主に見る人 | 採用担当・チームの責任者 | 事業主・案件の担当者 |
| かける時間 | 短時間で見られる | さらに短くなりがち |
| 知りたいこと | 過程と伸びしろ、一緒に働けるか | 再現性と、頼みやすさ |
| 優先して載せる | 制作過程・学ぶ姿勢・担当範囲 | 実績の再現性・料金・連絡のしやすさ |
| 薄くてよい | 細かい料金表 | 長い経歴 |
採用選考では「どう考えて作ったか」「これからどう伸びるか」が見られます。
いっぽう発注検討では「同じ成果をうちでも出せるか」「気持ちよく頼めるか」が中心になります。
誰に見せるかを決めないまま作り始めると、どの項目も中途半端になります。
だからこそ、器を埋める前に、提出先を1つ決めます。このあとの作品数や並び順の話は、すべてこの軸に紐づきます。
作品は何点載せるのがいい?目安が割れる理由と並べる順番



作品は何点そろえれば十分ですか?



適切な点数は提出先で決まります。狙う案件に近い作品を厳選し、後から増やせば大丈夫です。
適切な作品の点数は提出先で決まります。採用選考なら、過程まで語れる作品を数点に厳選します。発注検討なら、狙う案件と同じ種類の実績を、再現性が伝わる数に絞ります。
「10〜20点」「1ページに1作品」「最低3ページ以上」などの数字を挙げる記事もありますが、公的な基準ではありません。想定する職種や提出先が違うため、数字が食い違います。
| よく見かける目安 | 想定されがちな前提 | 受け取り方(参考) |
|---|---|---|
| 10〜20点 | 幅広い実績がある人向け | 多ければ良いわけではない |
| 1ページに1作品 | 1点ずつ丁寧に見せる構成 | 見せ方の一例にすぎない |
| 最低3ページ以上 | 最低限の量を確保したい | 初期は無理に埋めない |
上の数字はどれも各社の解説記事で見かける目安で、伝聞として参考にとどめてください。
どれを残すかの具体的な基準は、後半の「4つの質問で仕分ける」にまとめました。ここでは点数と並び順だけ先に片づけます。迷ったら、狙う案件に近い作品を厳選し、増やすのは後からで構いません。
最初の数点で印象が決まるので近い案件から並べる
見る人は、最初の数点で印象を決めます。だから並び順は、狙う案件に近い順が基本です。
オールジャンルを時系列で並べるより、これから取りたい仕事に似た作品を先頭に置くほうが、意図が伝わります。
最初の1画面で「頼みたい」と思わせる並びが、点数そのものより効きます。古い順・作った順に並べる必要はありません。
作品1点ごとに書くのは課題と担当範囲と成果



作品の説明文には、何を書けばよいですか?



背景・担当範囲・工夫・結果の順で書くと伝わります。特に担当範囲は正直に書きましょう。
作品のサムネイルだけでは何をした人か伝わりません。1点ごとに、短い説明文を添えます。書く順番の型は、次の4つです。
- どんな相手の、何の課題か(背景)
- 自分が担当した範囲(工程・役割)
- 判断したこと・工夫したこと
- 結果どうなったか(成果)
この4つのうち、抜けやすいのが担当範囲です。チームで作ったものを一人で全部やったように見せると、面談や打ち合わせで話が食い違います。
「デザインは自分、コーディングは別の人」のように、担当した工程を分けて書きます。担当範囲を正直に書くほど、任せられる仕事の輪郭がはっきりします。
成果を数字で書けると説得力が増します。ただし書いてよいのは、発注者が公表している数値か、自分で確認できた事実だけです。
聞いただけの数字や、確かめようのない伸び率は書きません。確認できないときは「◯◯を目的に改善した」と、やったことを定性的に書けば十分です。
良い書き方と物足りない書き方の違い
物足りない例は「あるコーポレートサイトを制作しました」の一文で終わるものです。これだと、担当範囲も工夫も伝わりません。
良い例はこうです。「小規模な事業者向けのコーポレートサイトで、情報設計とコーディングを担当。スマホでの読みやすさを優先し、問い合わせ導線を1画面に収める構成にした」。
相手・担当・工夫の3つが読み取れれば、説明文としては十分です。社名や固有の数値を出さなくても、仕事の中身は伝わります。
職種で載せ方の違いを要点だけ押さえる



職種によって、見せ方は変えたほうがよいですか?



相手が最初に確かめる箇所は職種で変わりますが、担当範囲を分けて書く点はどの職種でも共通です。
職種によって相手が最初に確かめる箇所は変わります。ここでは要点だけに絞り、詳しい作り方は各職種の記事に譲ります。
Web制作。 まず問われるのは、表示の見やすさとスマホでの崩れのなさです。公開URLか画面キャプチャに使った言語やツールを添え、一人で作ったのかチームの一部かを書き分けます。
ライティング。 相手が最初に確かめるのは、文章そのものと、扱えるジャンルや文字数の幅です。公開記事のURL、出せなければ抜粋を用意し、構成・執筆・編集のどこを担ったか明記します。
動画編集。 決め手は、冒頭数秒のテンポと、指定に合わせられるかです。尺の違う数本を並べ、カット・テロップ・カラーの担当範囲を分けて示します。
デザイン。 見る人が探すのは、その配色や余白を選んだ理由です。意図を一言添えると、感覚ではなく考えて作れる人だと伝わります。
どの職種でも、担当範囲を分けて書くのは共通です。Web制作・ライティング・動画編集の詳しい作り方は、各職種の記事で解説しています。
載せるか迷う作品は4つの質問で仕分ける



出来がまちまちの作品は、どう選べばよいですか?



許諾・関連性・担当説明・実力の下限の4つの質問に通し、すべて「はい」の作品だけを載せます。
感覚で判断するのではなく、4つの質問を通してから決めます。出来にばらつきのある作品を前に止まるなら、すべてをこの基準に通しましょう。
- 掲載の許諾が取れるか(契約や約束に反しないか)
- これから狙う案件と関連するか
- 自分の担当範囲を説明できるか
- 今の実力の下限になっていないか
すべてに「はい」なら載せます。1つでも「いいえ」があれば、いったん外します。この形なら、感覚ではなく基準で決められます。
4つを通った作品の数が、そのまま載せる点数になります。点数は「基準を通った結果」であって、先に決める目標ではありません。
公開したあとも、この4問は使えます。狙う方向が変わったら並べ替え、実力の下限になった古い作品は外します。
見直しのきっかけは、案件が1つ終わるたびがちょうどよいタイミングです。1件終わったら、載せる作品を1つ見直す。それだけで、ポートフォリオは古びません。
載せてはいけない情報と守秘義務がある案件の扱い方



守秘義務がある案件は、載せてはいけないのですか?



個人情報や未公開情報は載せられません。掲載の可否は契約を確認し、発注者へ直接尋ねましょう。
掲載の可否を尋ねるのは、後ろめたい行為ではありません。実績を見せたい気持ちと、守るべき約束の板挟みで止まる人が多い箇所です。まず、載せてはいけないものを整理します。
- 発注者から預かった個人情報(担当者名・連絡先・社内資料)
- まだ公開されていない情報(未発表の製品・非公開のページ)
- 第三者に権利がある素材(支給された写真・フォント・ロゴの無断利用)
- 自主制作を実案件のように見せる、説明不足の実績
そのうえで、守秘義務のある案件をどう扱うかです。
2024年11月1日、フリーランス新法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)が施行されました。
この法律で、発注する側にいくつかの義務ができました。まず、取引条件を書面などで示すこと。これは、すべての発注者に当てはまります。出典:政府広報オンライン フリーランス新法の解説。
さらに、従業員を雇うような一定の発注者(特定業務委託事業者)には追加の決まりがあります。
報酬の支払期日は、成果物を受け取った日から60日以内のできるだけ早い時期に定めることとされています。
6か月以上の継続的な業務委託を途中で打ち切る場合は、原則として30日前までに予告することも決まりました。出典:公正取引委員会 フリーランス法パンフレット。
どちらも掲載の可否を決める規定ではありません。ただ、取引条件を書面で確かめ合う流れは広がりました。
その流れの中でなら、掲載してよいかをあわせて尋ねるのも自然です。掲載可否を尋ねるのは、後ろめたい行為ではありません。
契約書で確認する3つの項目
契約書や発注時の書面で、次の3か所を見ます。
- 秘密保持条項(何を、いつまで秘密にするか)
- 成果物の権利帰属(著作権が発注者に移るか、自分に残るか)
- 実績公開の可否(ポートフォリオやSNSへの掲載が認められているか)
この3つが書面になく口頭だけのときは、あらためて確認します。曖昧なまま載せると、後からトラブルになりかねません。
契約の解釈やトラブルで迷ったら、公的な無料相談も使えます。フリーランス・トラブル110番は、厚生労働省が第二東京弁護士会に委託して運営する相談窓口です。
ただし掲載してよいかどうかは、窓口ではなく発注者へ直接尋ねます。
掲載許諾を依頼するメールの例文
そのまま使える、短い例文です。社名や案件名は、自分の状況に置き換えてください。
掲載を断られても、伝え方の幅は残っています。ただし、これらは無断で載せてよい形ではありません。どこまでなら載せてよいかを、発注者にもう一度確認します。
- 社名だけ伏せる(「ある小売業向けのサイト」のように業種で示す)
- 業種と役割だけにする(「コーポレートサイトのコーディングを担当」)
- 固有名や数値を外し、課題と工夫だけを書く(「表示速度の改善を目的に構成を見直した」)
案件の存在自体を明かさない秘密保持契約もあります。その場合は、業種や役割を書くだけでも約束に反します。断られた意向に反して載せると、契約違反や信頼の毀損につながります。
実績がまだ少ない段階で載せるものをそろえる方法



実績が少なくても、載せられるものはありますか?



自主制作や学習で作ったものも載せられます。「自主制作」と明記して、実案件と区別しましょう。
実績が少なくても「何のために載せるか」がはっきりしていれば、無理に埋める必要はありません。3件以下の場合でも、載せる材料はゼロではありません。
自主制作。 自分で課題を設定して作ったものです。狙う職種で「こういうものが作れる」と示すために載せます。説明文には「自主制作」と明記します。
既存サイトの作り直し提案。 実在するサイトを題材に、自分ならこう改善するという提案です。課題を見つける力と、改善の方向を示せます。元サイトの権利に触れない範囲で作ります。
学習で作ったもの。 講座や模写で作った制作物です。基礎ができていることを示せます。模写やチュートリアル由来であることは、隠さず書きます。
過程の記録。 制作の途中経過や、考えたことのメモです。伸びしろと学ぶ姿勢を、採用選考の相手に伝えられます。
ここで守りたい線引きが1つあります。自主制作は「自主制作」と書く。これが、実績の少ない段階でいちばん大事な区別です。
実案件のように見せると、面談や見積もりの段階で食い違いが生まれ、かえって信頼を失います。正直に区別しておくほうが、結果として評価されます。
無償の案件や、友人からの依頼を載せる場合も、相手に掲載の可否を確認します。お金のやり取りがなくても、成果物の権利や公開の可否は残るためです。
材料がそろえば、あとは今日から器を埋め始められます。
まとめ
- ✓ 必須は7項目:作品より、プロフィールや料金など周辺の情報のほうが空欄になりがち
- ✓ 提出先を先に1つ決める:見る人と目的で優先する項目が入れ替わるため、器を埋める前に決める
- ✓ 点数は4つの質問の結果:許諾・関連・担当説明・実力の下限を通った作品の数が、そのまま点数になる
- ✓ 守秘義務は確認して越える:契約の3項目を見て、掲載してよいかは発注者へ直接尋ねる
迷ったら、まず提出先を1つ決めるところから始めます。そこに近い作品だけを4つの質問で選び、守秘義務が気になる案件は、この記事の例文で確認メールを1通送る。それだけで、止まっていた手が動き出します。
完璧に仕上げるより、今日ひとまず形にするほうが早く育ちます。
よくある質問
- ポートフォリオは無料のツールで作っても問題ありませんか?
-
問題ありません。無料のブログサービスや作品共有サイトでも始められます。器の種類より、7つの必須項目がそろっているかどうかが大切です。
- ポートフォリオはどれくらいの頻度で更新すればよいですか?
-
決まりはありませんが、案件が1つ終わるごとに作品を1つ見直すと古びません。狙う仕事が変わったときも、並べ替えや入れ替えのよい機会になります。
- 顔写真や本名は必ず載せる必要がありますか?
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必須ではありません。連絡が取れる導線があれば十分です。実名や顔出しに抵抗があれば、活動名と問い合わせフォームだけでも成立します。
- 複数の職種を1つのポートフォリオにまとめてよいですか?
-
まとめても構いませんが、狙う職種ごとに見せる順番を変えるのがおすすめです。応募先に関係の薄い作品は後ろに回すか、別ページに分けると意図が伝わります。
- 応募先から「ポートフォリオは不要」と言われたら、用意しなくてよいですか?
-
求められなくても、用意しておくと有利に働くことがあります。面談や打ち合わせで作品を見せられると、言葉だけよりも実力が伝わりやすいためです。
参考文献・出典
本文の法制度と窓口は、公的資料で確認できます。
最終更新: 2026-08-03/引用データはフリーランス新法(2024年11月1日施行)に基づきます。
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