フリーランスの単価交渉の伝え方は?角を立てない例文と断られた時の返し方

フリーランスの単価交渉の伝え方は?角を立てない例文と断られた時の返し方

「そろそろ単価を上げたい。でも、お金の話を切り出すのが怖い」。そう感じたまま、案件開始時に決めた単価が1年以上そのまま、という方は少なくありません。

物価は上がり、依頼される範囲も少しずつ広がっているのに、報酬だけが据え置きのまま。割に合わないと感じても、言い方ひとつで関係が壊れないかと不安で切り出せない。そんなフリーランスは決して珍しくありません。

過去に一度やんわり打診して流された経験があると、二度目はさらに切り出しにくくなります。

この記事では、角を立てずに単価交渉を伝える具体的な言い回しと、断られたときの返し方を、公的データと制度の裏づけとともに整理します。テンプレートを丸写しするのではなく、自分のケースに合わせて調整できる形で紹介します。

この記事でわかること
  • 角を立てずに単価交渉を切り出すための根拠・タイミング・言い回しの整え方
  • メール・チャット・対面で使えるケース別の例文と差し替え方
  • 断られたときの返し方と、単価以外で条件を改善する代替案
  • 交渉の後ろ盾になるフリーランス新法と取適法の基礎
目次

単価交渉を切り出す前に押さえる伝え方の全体像

相談者

単価交渉って、いきなり金額を伝えればいいのでしょうか?

編集長

先に根拠とタイミングをそろえるほど通りやすくなります。まずは全体の流れから確認しましょう。

単価交渉の伝え方は、「根拠」「タイミング」「言い回し」の3つの掛け合わせで決まります。まず値上げの根拠をそろえ、次に切り出すタイミングを選び、最後に角を立てない言い回しに落とし込む。この記事も、その順番で進みます。

単価交渉というと、いきなり金額を切り出す場面を思い浮かべがちです。けれど、うまくいく交渉の多くは、切り出す前の設計でほとんど決まっています。感情のまま「生活が苦しいので上げてほしい」と伝えても、相手には判断材料が渡らないからです。

なお、この記事はクライアントと直接契約している場合を前提にしています。エージェント(仲介会社)を介して働いている場合は、担当者に希望と根拠を伝え、交渉を代行してもらうのが基本の流れです。

単価が据え置きのまま割に合わなくなるのはあなただけではない

報酬の条件を思うように決められていないのは、実は多数派です

公正取引委員会と厚生労働省は、令和6年(2024年)にフリーランス取引の実態調査を行いました。そこから、いくつかの数字を見てみます(出典:厚生労働省 フリーランス取引の実態調査 結果概要(PDF))。

  • 報酬額を十分に協議して決められなかった:全体で67.1%
  • コスト上昇分の価格転嫁を、一部しか、または全く受け入れてもらえなかった:62.5%
  • 業種別では、情報通信業で66.3%、学術研究・専門技術サービス業で75.6%が協議できなかった

Web制作やライティングに近い領域ほど、交渉の難しさが表れています。決められないのは、自分の弱さのせいではありません。取引の構造の側に、交渉しにくさが組み込まれています。

ただし、この調査は事業者団体の会員を中心としたアンケートで、フリーランスの回答は782件です。全員に一般化はできませんが、報酬条件の悩みが広く共有されていることは読み取れます。だからこそ、感覚ではなく手順で準備する価値があります。

テンプレートをそのまま送っても通りにくい理由

ネット上の交渉メール例文は便利ですが、そのまま送ると浮くことがあります。理由は、例文があなたの案件の前提を知らないまま書かれているからです。

たとえば「業務範囲が当初より広がったため」という一文は、実際に範囲が広がった人には効きます。そうでない人が使うと事実と食い違い、相手は違和感を覚えます。交渉そのものへの信頼まで下がりかねません。

この記事の例文も、金額や理由をそのまま使う前提では作っていません。差し替える箇所を明示しているので、自分の状況に置き換えてから送ってください。

単価交渉を伝えるベストなタイミングと切り出し方

相談者

いつ切り出すのが一番角が立たないのでしょうか?

編集長

契約更新や成果を出した直後など、見直す理由と区切りがそろう時が狙い目です。

交渉は、いつ切り出すかで通りやすさが変わります。相手が単価を見直しやすいのは、「見直す理由」と「見直す区切り」がそろうタイミングです。ここでは、切り出しやすい3つのタイミングと、一度断られた相手への二度目の切り出し方を紹介します。

契約が更新される節目に合わせる

契約更新は、条件を見直す口実がもっとも自然に立つタイミングです。相手も「次の期間の条件をどうするか」を考える前提なので、更新の1か月ほど前に切り出すと、相手が予算を組み直す余地があります。

最初の一言は、たとえばこう置きます。「次回の契約更新にあたり、現在の業務範囲を踏まえて報酬について一度ご相談させてください」。金額をいきなり出さず、相談の場を作る言い方が入り口になります。

成果を出した直後に切り出す

あなたの価値がもっとも伝わっているのは、成果が出た直後です。納品物が評価されたり、数値の成果が出たりした直後は、相手の記憶が新しいうちに、実績と結びつけて話せます。

切り出しの一言は、「先日の施策で〇〇という成果につながりました。この成果を続けるために、報酬の見直しをご相談できればと思います」。成果と報酬をひとつの文でつなぐのがコツです。より丁寧な文面は、後半の例文の章でまとめます。

依頼される範囲が広がったタイミングで切り出す

当初の契約になかった作業が増えているなら、それは交渉の正当な理由になります。「気づいたら仕事が増えていた」を放置せず、範囲の変化を見える形にして伝えます。

一言の例は、「当初お受けした範囲に加えて、最近は〇〇も担当しています。範囲に見合う形で単価を見直せないかご相談させてください」。事実の変化を起点にすると、わがままではなく調整の相談として受け取られます。

一度流された相手に二度目を切り出すには

前回流された相手への二度目は、同じ形のまま送らないことが肝心です。何も足さずに再送すると、相手は「また同じ話か」と受け取ります。前回すっと流された記憶があると、二度目はどうしても身構えてしまいます。

まず、前回からの間隔をとります。目安になるのは日数ではなく、状況の変化です。契約更新が近づいた、担当範囲が増えた、成果が出た、といった前回になかった変化が起きたときが切り出しどきです。逆に、変化がないまま日数だけ空けて再送しても、話はなかなか動きません。

前回に触れるときは、流されたことを責めない言い方にします。「前回はお返事いただけませんでしたが」と経緯を蒸し返すと角が立ちます。「以前ご相談した件ですが」と事実だけ軽く触れ、すぐに前回以降の変化へ話を移すのが自然です。

そのうえで、二度目には次のうち少なくとも1つを加えます。

  • 前回になかった新しい根拠を1つ足す
  • 前回以降に増えた範囲や出した成果を示す
  • いつから反映したいか、返答してほしい時期をやわらかく添える

前回から今回への変化が伝わる、二度目用の文面はこうです。

前回からの変化と、いつから反映したいかをセットで示すと、蒸し返しではなく「状況が変わったので再相談」として自然に受け取られます。

交渉前に用意する3つの根拠と伝わる言語化のコツ

相談者

何を準備しておけば、交渉に説得力が出ますか?

編集長

提供価値・相場との差・値上げの正当性の3つをそろえると、事実で話せます。

説得力のある交渉は、事実の積み上げでできています。用意する根拠は、「提供している価値」「相場とのギャップ」「値上げの正当性」の3つにしぼると準備が進みます。

それぞれに、一文へ落とすための穴埋め文型を添えます。あわせて、希望額の決め方と、相談への不安との向き合い方も整理します。

提供している価値を数字と事実で示す

価値は「作業」ではなく「相手が得た結果」で語ると伝わります。まず棚卸ししたいのが、自分は何を提供しているのか。作業時間や納品数だけでなく、相手のビジネスにどう貢献したかまで書き出します。

穴埋め文型はこうです。「私は〇〇(担当業務)を通じて、〇〇(相手の成果や変化)に貢献しています」。ここが埋まらないときは、実績の整理が足りていないサインです。担当した案件の成果を、数字と一緒に書き出しておきましょう。

相場と自分の単価のギャップを確認する

相場は職種・スキル・地域で大きく変わるため、単一の全国平均を根拠にしないことが大切です。次に、いまの単価が相場に対してどの位置かを確認します。

自分の職種に近い条件で複数の情報を見比べ、幅で把握します。詳しい確認の仕方は、職種別のフリーランス単価相場の調べ方で整理しています。穴埋め文型は、「近い条件の相場は〇〇円前後で、現在の単価〇〇円との差は〇〇円です」。数字で差を示せると、感覚論から抜け出せます。

希望する金額をいくらにするか決める

相場の位置が見えたら、次は「では、いくらでお願いするか」です。ここが決まらないと、例文の【現行〇〇円→希望〇〇円】が最後まで埋まりません。

決め方は、増えた作業量や出した成果から逆算します。当初より作業が2割ほど増えているなら、まずはその増分に見合う2割前後の引き上げから相談する、という組み立てです。

金額は一点で出すより幅で持ちます。「希望はこのあたり、下限はここまで」と自分の中で決めておくと、逆提案が来ても落ち着いて返せます

※適正な幅は職種やスキル、相手との関係で変わります。初回はいきなり大きく上げるより、増えた範囲や成果に見合う分から示すほうが、相手も社内で通しやすくなります。

具体的に当てはめてみます。現行が月3万円で、この半年に作業が2割ほど増えているとします。このときは「この半年で〇〇の対応も加わりましたので、現行の3万円から3万6千円で見直していただけないでしょうか」と伝えます。

増えた範囲と金額をひと続きにするのがコツです。この数字のまま使うのではなく、自分の現行単価と増えた範囲に置き換えて計算してください。

値上げを求めるのは正当だと自分が納得しておく

最後は、心理的な土台です。取引条件を見直す相談は、対等な事業者どうしの当たり前のやり取りで、わがままでも非常識でもありません。

制度の面でも、フリーランスの取引を守るしくみが整ってきました。詳しい中身は記事の後半で扱います。

「交渉していい」と自分が腹落ちしていると、言葉に迷いが出ません。穴埋め文型は、「範囲と成果の変化を踏まえ、条件の見直しをお願いしたいです」。理由・変化・お願いの順に並べると、角が立ちにくくなります。

「相談したら契約を切られるのでは」という不安への向き合い方

準備が整っても、最後に残る不安があります。「相談を持ちかけたら、それをきっかけに契約ごと切られるのでは」という怖さです。ここを名前にして向き合わないと、準備しても送れません。

まず、値上げの相談は「あなたを切るかどうかの通告」ではなく、条件をすり合わせる提案です。丁寧に事実ベースで持ちかける相談を理由に、相手が即座に契約を打ち切るという反応は考えにくいものです。

むしろ、相談しただけで関係が切れるなら、その取引はもともと続けにくかったと見たほうが現実的です。

そのうえで、打診の前に次の2点を見ておくと、さらに安心できます。

  • 相手の予算の余地:直近で発注が増えている、新しい案件が動いている、といった兆しがあるか
  • 関係の温度:やり取りが良好で、あなたの仕事が頼りにされていると感じられるか

この2つが悪くないなら、相談で関係が壊れる心配は小さくなります。心配が残るなら、金額の相談ではなく、まず範囲や進め方の相談から入って様子を見る手もあります。

そのまま使える単価交渉の伝え方の例文

相談者

例文はそのまま送っても大丈夫でしょうか?

編集長

【 】の箇所を自分の情報に差し替えてから送ってください。チャネルとケースで使い分けます。

ここからは実際の文面です。例文は「型」として使い、【 】の箇所を自分の情報に差し替えてから送ってください。チャネル(メール・チャット・対面やオンライン)と、ケース(契約更新・新規や追加・成果を出した後)で言い方を変えます。

まず、どの場面でどのチャネルを選ぶかを整理します。

チャネル向いている場面気をつけること
メール金額を含む正式な相談一往復目で条件を出しきる
チャット方向性の口火を切る詳細は別チャネルに移す
対面・オンライン関係が近く温度感を見たい合意はあとで文面に残す

メールで伝えるときの例文

メールは、推敲できて記録も残るため、金額に触れる相談に向いています。件名で用件を軽く示し、本文は「感謝→事実→相談→相手への配慮」の順に組みます。

件名は、用件が一目で伝わる短さにします。たとえば「【案件名】報酬のご相談(〇〇)」のように、案件名と自分の名前を添えると開いてもらいやすくなります。

契約更新のケースでは、次のような文面が使えます。

差し替える箇所は次の3つです。

  • 【担当範囲の変化や出した成果】=この期間で増えた作業や、出した結果
  • 【現行〇〇円から希望〇〇円へ】=相場を踏まえた具体的な金額
  • 結びの一言=相手の状況に配慮する表現

金額はあいまいにせず具体的に示すと、相手が社内で検討しやすくなります。

チャットで短く伝えるときの例文

金額の交渉は口火だけチャットで切り、詳細は通話やメールに移すと誤解が減ります。SlackやChatworkなどでやり取りしている相手には、長いメールより短い相談が合います。新規・追加案件のケースの例です。

チャットでは、一度に条件を詰め込みすぎないのがコツです。まず方向性の合意を取り、金額の根拠は別途送ります。差し替えるのは【新規業務】と【〇〇円】、そして相手の反応を見て次の一手を決めます。

対面やオンラインMTGで伝えるときの例文

表情や温度感が見える場は、合意した内容をあとからメールで文面に残すのがおすすめです。相手の反応を見ながら進められる利点がありますが、記録が残らないため、その場で口頭確認してから文面化します。

タイミングの章で触れた「成果を出したあと」の切り出しを、対面向けにふくらませるとこうなります。

対面では、金額を出したあとに少し沈黙が生まれても、こちらから焦って条件を下げないことが大切です。相手が考える時間だと捉えます。話がまとまったら、「本日ご相談した内容は、あらためてメールでお送りします」と伝え、文面に落とします。

角を立てない言い回しとやってはいけないNGフレーズ

相談者

つい感情的な言い方になってしまいます。どう直せばよいですか?

編集長

事情ではなく仕事の事実を主語にすると、相手は反論ではなく検討に向かいやすくなります。

同じ用件でも、言い回しひとつで受け取られ方が変わります。角が立つのは、事実ではなく感情や比較で相手を動かそうとするときです。ここでは、避けたい言い方と、その言い換えを対比で示します。

感情や生活の事情で訴えない

「生活が苦しい」「他の案件のほうが高い」といった訴えは、相手に判断材料を渡せません。むしろ、相手を責めているように聞こえるリスクがあります。

避けたい言い方言い換え
生活が苦しいので上げてほしい業務範囲が広がったため、範囲に見合う単価をご相談したい
このままでは続けられない長く続けるために、条件を一度見直したい
他社ならもっと高い近い条件の相場を踏まえ、〇〇円でご相談したい

すべてに共通するのは、主語を「私の事情」から「仕事の事実」へ移している点です。事実を起点にすると、相手は反論ではなく検討に向かいます。

事実と希望を切り分けて伝える

動かせない事実と、こちらのお願いをまぜないようにします。「範囲が増えた」は事実、「だから〇〇円にしてほしい」は希望です。この2つを分けて示すと、相手はどこを検討すればよいか分かります。

まぜてしまうと、「範囲が増えたのだから上げるべきだ」という圧の強い文になりがちです。事実を先に置き、希望は相談の形で後ろに置くと、同じ内容でもやわらかく伝わります。

また、詰め寄る言い方も避けます。「上げてもらわないと困る」のような言い方は、相手の逃げ場をなくします。「ご相談させてください」「いかがでしょうか」と、相手に判断の余地を残す言い方を選びましょう。

断られた時の返し方と関係を壊さない次の一手

相談者

断られたら、そこで諦めるしかないのでしょうか?

編集長

返し方しだいで次につながります。範囲や支払条件など、単価以外の調整も検討しましょう。

交渉は、断られて終わりではありません。断られたときの返し方こそ、次につながるかどうかの分かれ目です。相手の反応は、大きく「断り」「減額の逆提案」「保留」の3つに分かれます。それぞれに落ち着いて返せるよう、あらかじめ返し方を用意しておきます。

断り方のパターン別に返し方を用意する

はっきり断られた場合は、感謝を先に置き、退路を残します。「ご検討ありがとうございます。承知しました。次の見直しのタイミングで、あらためてご相談させてください」。その場では引きつつ、次の相談の約束だけ残すのがポイントです。

希望より低い金額を逆提案された場合は、すぐ受けるか断るかの二択にしません。「ご提示ありがとうございます。その金額で進める場合、範囲を〇〇までに調整するのはいかがでしょうか」と、金額と範囲をセットで調整します。

保留された場合は、放置されないよう次の区切りを決めます。「では、次回更新の時期にあらためてご相談させてください」と、いつ話すかを合意しておきます。

値上げが難しいときに交渉できる代替案

金額そのものが動かなくても、実質的な条件は改善できます。単価以外にも、交渉のカードは複数あります。

代替案効果伝え方の例
作業範囲を減らす実質の時間単価が上がる単価が据え置きなら、〇〇は範囲外にできますか
支払サイトを短くする資金繰りが安定する支払を月末締め翌月払いにできますか
稼働量の上限を決める働きすぎを防ぐ月〇時間を上限に調整させてください
見直し時期を約束する次回の交渉が進めやすい半年後に再度見直す前提でいかがでしょうか

範囲を調整するなら、あらためて見積もりを出し直すと話が整理されます。作り方はフリーランスの見積もりの作り方を参考にしてください。

それでも折り合わないときの見切りの判断基準

どうしても条件が合わないときは、感情ではなく、時間単価と将来性の2軸で見ます。続けるか離れるかを判断します。判断の目安を挙げます。

  • 実際の時間単価が、近い条件の相場を大きく下回り続けている
  • 範囲が増え続けるのに、見直しの相談に一切応じてもらえない
  • この取引に時間を使うことで、より条件の良い案件を逃している

これらが重なるなら、更新のタイミングで距離を置く選択も現実的です。離れる場合も角を立てず、「今後の体制を考え、今回で一区切りとさせてください。これまでありがとうございました」と、感謝で締めます。

単価交渉を支えるフリーランス新法と下請法の基礎

相談者

値上げをお願いするのは、そもそも図々しいことなのでしょうか?

編集長

いいえ。フリーランス新法など発注者が守るべきルールもあり、対等な相談として持ちかけて構いません。

値上げを求めることに、引け目を感じる必要はありません。フリーランスの取引には、発注者側が守るべきルールがあるからです。ここでは、交渉の後ろ盾になる制度を、適用される範囲まで含めて正確に押さえます。

フリーランス新法で発注者に義務と禁止行為が定められた

令和6年11月1日、フリーランス・事業者間取引適正化等法(フリーランス新法)が施行されました。正式名称は、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律です。

この法律では、義務や禁止行為が課される相手が段階的に分かれています。ここが交渉での使い方を左右するので、整理して押さえます。

  • 取引条件を書面などで明示する義務は、フリーランスに業務を委託するすべての発注者にかかります
  • 報酬を給付を受けた日から原則60日以内に支払う義務は、従業員を雇う発注者(特定業務委託事業者)が対象です
  • 報酬の一方的な減額や、著しく低い報酬を不当に定めること(買いたたき)の禁止も、従業員を雇う発注者が継続して発注する場合が中心です

(出典:中小企業庁 フリーランス・事業者間取引適正化等法

つまり、相手が従業員のいない個人だと、60日ルールや買いたたきの禁止が及ばない場合があります。

交渉で使うなら、細かな適用条件は制度ページで確認しておきます。そのうえで「制度上も一方的な減額や買いたたきは認められていない」という前提を、自分の側の安心材料として持っておく使い方が現実的です。

※ここから先は予測を含みます。制度が整ったことは、値上げの相談が通ることを保証するものではありません。

新法は最低限の保護を定めるもので、金額の合意は相手との話し合い次第です。これを強く盾にするより、対等な相談の背景として静かに踏まえるほうが、関係を保ちやすいと考えられます。

下請法との関係と交渉での使い方

フリーランス新法は、下請法が及ばない個人や小規模な相手との取引の空白を埋めるものです。

フリーランス新法ができる前は、発注者と受注者の取引の一部が下請法(下請代金支払遅延等防止法)で守られていました。ただし下請法は、発注者の資本金の規模で適用が決まるため、個人や小規模な相手との取引には及ばない場合がありました。

なお、その下請法も2026年1月1日に改正・名称変更され、中小受託取引適正化法(取適法)になりました。従来の資本金の基準に加えて従業員数の基準が加わり、対象が広がっています。

単価交渉との関係でいえば、協議に応じない一方的な代金の決定を禁じる規定が新たに設けられた点が大きな変化です。

条文の細部は自分で判断せず、公的な窓口で確認するのが安全です。取引でトラブルを感じたときは、国が委託して運営するフリーランス・トラブル110番などの相談窓口もあります。

なお直接契約では、条件の明示や請求を自分で管理することになります。個人での請求書の書き方は個人事業主の請求書の書き方にまとめているので、直接取引に進んだときに確認してください。

まとめ

  • 送る前の準備で決まる:この1年で増えた担当範囲と出した成果を1枚に棚卸しし、根拠をそろえてから文面を書きます。
  • タイミングを選ぶ:契約更新の節目・成果を出した直後・範囲が広がった時など、見直す理由が立つ時に切り出します。
  • 事実を主語に伝える:生活の事情ではなく仕事の事実を起点にし、事実と希望を分けて相談の形で伝えます。
  • 断られても次につなげる:代替案を1つ用意し、断られても次の見直し時期を約束して関係を保ちます。

単価交渉の成否は、文面を送る前の下ごしらえで大きく変わります。

まずやってみたいのは、この1年で増えた担当範囲と出した成果を1枚に棚卸しし、次の更新に向けて伝える文面を下書きすることです。

金額は相場を確認してから具体的に決め、断られたときの代替案も1つ用意しておくと、当日に迷いません。今日の下書きが、来月の単価を動かす一歩になります。

よくある質問

担当範囲は変わっていないのに単価を上げたいのは、わがままでしょうか?

いいえ。範囲が同じでも、経験を積んで質やスピードが上がったこと、長く続けるなかで負担が増えたことは、見直しの正当な理由になります。「継続してご一緒するなかで、質を保ち続けるために条件を一度見直したい」と、範囲以外の価値を軸に伝えると角が立ちません。金額は相場を確認したうえで幅で示します。

相談のメールに返信が来ないときは、どのくらいで催促すればよいですか?

すぐには催促せず、1週間ほど待ちます。反応がなければ、督促ではなく確認の形で一度だけ。「先日ご相談した件、お忙しいところ恐れ入りますが、ご確認いただけますでしょうか」で十分です。それでも返信がなければ、次の契約更新など自然な区切りまで置き、そこで改めて切り出します。短い間隔で何度も送ると印象を悪くします。

値上げと同時に、消費税やインボイスの分もどう切り出せばよいですか?

消費税は本体価格と分けて「別途消費税」と示すと分かりやすく、実務でも一般的です(事業者間の請求は税込・税抜どちらの記載も可)。値上げ交渉とは切り離し、事務連絡として「今後のご請求は税抜〇円に消費税を加えた形で記載します」と淡々と伝えると混乱がありません。インボイス(適格請求書)に登録している場合は、請求書に登録番号を記載します。制度の扱いは変わることがあるため、詳しくは国税庁のインボイス制度の案内で最新の内容を確認してください。

口約束で単価が上がったときも、書面に残したほうがよいですか?

はい。合意できたら「先ほどの条件を念のため文面でお送りします」とメールで残します。フリーランスの取引では発注者に取引条件を明示する義務があるため、条件を書面で確認することは相手にとっても自然な流れで、角は立ちません。あとで言った言わないになるのを防げます。

常駐や継続ではなく単発の案件でも、同じ切り出し方でよいですか?

単発では、次に発注が来たときが交渉のタイミングです。「前回と同じ内容ですが、今回から〇〇円でお見積もりします」と、見積もりの提示という形にすると自然に単価を更新できます。改まった交渉の体裁を取らずにすむぶん、切り出しやすい方法です。なお単発の取引では、買いたたきの禁止などの規定が及ばない場合もあります。

参考文献・出典

この記事に使用したデータは、公的機関の公開情報と2024年の実態調査を基にしています

最終更新: 2026-07-26/引用データは主に令和6年(2024年)の実態調査と、2024年11月1日施行のフリーランス新法時点です。あわせて、2026年1月1日施行の取適法(旧下請法)にも触れています。

この記事を読んだ方におすすめ

自分の職種の単価相場と手取りを知りたい方へ

はじめて見積書を作るフリーランスの方へ

はじめて請求書を発行する個人事業主の方へ

職種ごとのポートフォリオの型を知りたい方へ

どのAI業務ツールから使うか迷う一人社長へ

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

Toma氏のアバター Toma氏 一人社長 小さな事業の編集長

自らも一人社長として事業を経営し、「一人でも稼げる」「一人でも成長できる」 を実践。
Webマーケティング、BtoB営業、事業戦略を駆使し、社員ゼロで売上を伸ばす経営スタイルを確立。

「一人だからこそ、強く・自由に・スマートに。」をテーマに、独立・経営・集客・時間管理・資金繰り など、一人社長に必要な実践的なノウハウを発信中。

目次