独立して1〜3年、取引先は2〜3社、月商は20万〜50万円台を行き来している。サイト更新も資料作成もSNS運用代行も、来た仕事は受けている。
断ると次が来ない気がして、仕事の中身を選べないまま来た人は少なくありません。同じ時期に独立した人が「〇〇専門」と名乗って単価を上げていく一方、自分は実績が浅くて手が止まる。
詰まりの正体は、自分の内側を掘る作業と、発注側を確かめる作業が接続しないことにあります。自己分析をもう一周しても、この距離は縮まりません。
答えは5つの手順です。実績をタスクに割り、職業データベースで手元の作業と隣接職業を確かめ、募集を10件読みます。
そのうえで2軸の名乗り文に組み、4つの軸で採点して、上位を90日試します。独立後の案件がまだ少ない人は、手順1の数え方から読んでください。会社員時代の業務も数に入ります。
- 専門分野とは業界軸・職種スキル軸・課題軸のうち2つを組み合わせた名乗りであること
- 実績をタスクに分解し、職業データベースと募集10件で発注側の条件を確かめる手順
- 4つの評価軸で候補を採点し、今日から名乗れるものを優先する判定ルール
- 90日間を提案通過率と返信率で検証し、継続か言い換えかを決める進め方
フリーランスの専門分野とは何を指すのか
相談者専門分野って、職種名を名乗ることではないのですか?



職種名だけでは足りません。業界軸・職種スキル軸・課題軸のうち2つを組み合わせた1文が名乗りになります。
専門分野とは、業界軸・職種スキル軸・課題軸の3つのうち、2つを組み合わせた名乗りのことです。この記事ではこの意味で使います。
言葉が混線するのは、職種名を指す場合と、業界を指す場合と、解決する困りごとを指す場合が、同じ「専門」という語で語られるからです。何を決めればよいのかが定まらない原因はここにあります。
| 軸 | 立てる問い | 名乗りの例 |
|---|---|---|
| 業界軸 | 誰向けか | 士業事務所向け |
| 職種スキル軸 | 何をするか | サイトの更新運用の代行 |
| 課題軸 | どの困りごとを解くか | 問い合わせが月1件で止まる状態の改善 |
業界軸が効くのは、相手に商習慣や用語を説明せずに済むときです。職種スキル軸は、同じ作業を何度でも同じ質で出せるかで測られます。課題軸は、成果を件数や金額で語れるときに強く効きます。
決めるとは、3軸のうち2つを言葉にして、1つの名乗り文にすることです。
2軸を組み合わせた名乗りの例
自分の実績から候補が出てこないときは、先に組み合わせの型を見たほうが早く進みます。下の表は、業界軸か課題軸のどちらかを1つ、職種スキル軸を1つ並べた形です。
手元のタスクを右列に当てはめ、左列の言葉だけ入れ替えれば、その日のうちに名乗り文の形になります。
| 組み合わせ | 名乗り文の例 |
|---|---|
| 業界軸 × 職種スキル軸 | 士業事務所向けのサイト更新運用 |
| 業界軸 × 職種スキル軸 | 学習塾向けの問い合わせフォーム改修 |
| 業界軸 × 課題軸 | 地域の小売店の、来店予約が電話だけになっている状態の改善 |
| 課題軸 × 職種スキル軸 | 商品ページの説明文が古いまま止まっている状態の書き直し |
| 課題軸 × 職種スキル軸 | 更新が半年止まったサイトの、月次運用の引き受け |
粗すぎる名乗りと細かすぎる名乗りの境目
「Web全般」「なんでも対応します」は、3軸のどれも立っていない状態です。発注側は自分の困りごとと結びつけられず、価格以外に比べるところが残りません。
名乗りが粗いほど、選ばれる理由は安さに寄っていきます。
逆に、業界と職種と課題に地域と規模まで重ねると、当てはまる相手が急に少なくなります。声がかかる頻度が落ち、検証に必要な回数を確保できません。
目安は2軸です。3軸目は、案件が積み上がってから足しても間に合います。
絞ると増えるものと負うコスト
良い面だけで語ると判断を誤るので、変わることと負うことを同じ数だけ並べます。
- 指名で相談が来る:名乗りが具体的だと、相手の頭のなかで「この件はあの人」という結びつきが起こり、比較検討の土俵に上がる前に声がかかります
- 提案の説得力が上がる:特定の状態にある相手に何をしたかを書けば、同じ状態の相手だけが強く反応します
- 単価の根拠を作りやすい:作業時間ではなく、解いた困りごとの側から金額を説明できます
- 当面の受注機会は減る:声がかかる母数が小さくなるため、決めた直後の数か月は問い合わせが平らになることもあります
- 既存の2〜3社への説明が要る:何でも頼める相手として重宝されている場合、いきなり守備範囲を狭めると関係が揺れます
既存案件は切らずに、比率を下げる順番で扱うのが現実的です。決めた分野の需要そのものが動くこともあるため、戻り方は最初に決めておきます。
専門分野が決まらない3つの詰まり方



何度考えても決まらないのは、覚悟が足りないからでしょうか?



覚悟の問題ではありません。強みが抽象語のまま、需要を確かめず、戻り方を決めていない、この3つのどれかが抜けているだけです。
決められない人は、だいたい3つのどこかで止まっています。性格の問題ではありません。順番が抜けているだけです。
強みが抽象語のまま止まっている
自己分析ワークから出てくるのは「丁寧」「対応が早い」「気が利く」といった言葉です。これらは態度の説明であって、発注者が買う対象ではありません。
発注者が買うのは、作業と、そこから起きた変化です。
抽象語のままでは、募集情報のどの条件と重なるのかを照合できず、候補が一つも立ちません。抜け出す作業は、実績をタスクに割り直す手順です。態度の言葉を、動詞と対象がある文に置き換えます。
需要を確かめずに好みだけで並べている
やりたいことを起点に候補を出すと、名前は挙がるのに決めきれません。判断のよりどころが自分の気持ちしかなく、比べる基準を作れないからです。
好きかどうかは、長く続けるための条件として重要です。ただし単独では発注が起こる根拠になりません。採点表の4つ目の軸として扱えば、発注側の数字と並べて機能します。
足りないのは発注側の物差しだけです。職業データベースと募集情報で埋めます。
決めたら戻れないと思い込んでいる
先送りの多くは、この思い込みが原因です。宣言そのものに違約はありません。ただし契約書で受注範囲や稼働量を決めている取引先には、範囲を変える前に合意が要ります。
それでも怖いのは、変えるタイミングを決めていないからです。やめどきを決めていない選択は、一度言ったら戻れない話に見えます。
戻り方を先に書いてから決めれば、決断の重さは下がります。
専門分野の決め方は5つの手順



5つの手順は、全部でどれくらいの時間がかかりますか?



手順1から手順4までは合計6〜7時間で、1日で終わります。残りの手順5は90日かけて検証します。
強み側から始めます。発注側から入ると、自分に接続しない候補ばかりが並ぶからです。
- 手元の実績をタスク単位に分解して候補を出す(2〜3時間)
- 職業データベースでタスクと隣接職業を確かめる(1時間)
- 募集を10件読み、発注条件と相手が使う言葉を控える(2時間)
- 候補を2軸の名乗り文に組み、4つの軸で採点する(1時間)
- 90日走らせて、継続か言い換えかを先行指標で判断する(3か月)
手順2と手順3を分けるのは、見えるものが違うからです。職業データベースで分かるのは、職業の仕事内容、タスク、必要なスキル、隣接する職業です。
外向けの名乗りに使う語と、発注が起きている条件は、募集10件と既存顧客が相談時に使った言葉で確かめます。
手順4と手順5のあいだには、名乗り方と見積の書き換えを1章はさみます。決めた言葉をプロフィールと見積の形に落とす準備で、手順そのものには数えていません。
以降の表の記入例は、Aさん1人分に統一します。実在の個人ではなく、表の埋め方と数字のつながりを示すために設定した架空の人物です。
Aさん(架空):元事務職で独立2年目、月商は30万円前後、取引先は3社(学習塾、税理士事務所、EC事業者)。手順1から手順4は1日で終わり、手順5に3か月かけます。
強みをタスク単位に分解して候補を出す



独立後の実績が3件しかなくても書き出せますか?



書き出せます。会社員時代の担当業務も同じ作業として数えられるため、前職ぶんも含めて4項目で書いてください。
最初にやるのは、職種名を書かないことです。「Web制作」ではなく「既存ページの文言修正と画像差し替え」まで下ろすと、募集情報の条件と照合できるようになります。
過去の案件を4項目で書き出す
直近12か月の案件から3〜5件を選び、誰の、どんな状態を、何をして、どう変えたかの4項目で書きます。1件あたり1行で十分です。
Aさんの3件は次のようになりました(記入例)。
- 地域の学習塾の、問い合わせフォームが動かない状態を、フォーム改修と導線の文言修正をして、月2件の問い合わせが入る状態にした
- 税理士事務所の、半年更新が止まったサイトを、月次のお知らせ更新と料金ページの文言修正をして、毎月更新される状態にした
- EC事業者の、説明文が古い商品ページ10本を、書式をそろえて書き直して、担当者が自分で更新できる状態にした
ここまで下ろすと、丁寧という言葉は消えます。
3件を並べると、繰り返し出てくる作業が浮かびます。それが手持ちの再現可能なタスクです。Aさんの場合は、サイトの更新と文言修正、問い合わせフォームまわりの改修、ページ単位の文章の書き直しの3つが残りました。
job tagで隣接する職業に広げる
次に、抽出したタスクを含む職業を公的な職業データベースで引きます。厚生労働省の職業情報提供サイト(job tag)には、職業ごとの「しごとの内容」と、その職業で行われるタスクの一覧が掲載されています。
自分がすでにやっている作業が、どの職業の中核タスクに当たるのかを、外部の基準で確かめられます。
| 手元のタスク | 確認する職業ページ | 募集で試す検索語 |
|---|---|---|
| サイトの更新、文言修正、フォーム改修 | Webデザイナー(Web制作会社) | サイト更新、WordPress更新、フォーム改修 |
| 商品ページや紹介ページの文章の書き直し | Webマーケティング(ネット広告・販売促進) | 商品ページ改善、コンテンツ改善、集客導線 |
同じ手順で、資料作成やSNS運用のタスクも該当する職業ページを検索します。職業によっては、タスクごとの実施率も併記されています。掲載内容は改定されるため、控えるときは参照した日付をセットで書いてください。
実績が浅いと感じるときの数え方
独立後の案件だけで数えると、どうしても薄く見えます。会社員時代に担当した社内業務も、発注者から見れば同じ作業です。
問い合わせ対応の文面を整えた、部署の資料テンプレートを作った、外注先とやり取りしたといった経験は、そのままタスクとして書けます。
名乗るための条件は年数ではなく、同じ作業を再現できるかどうかです。
前職の経験も含めて書き出すと、候補はいくつも並びます。次はここに、発注側の物差しを当てます。
タスクの重なりと発注条件を確かめる



就業者数が多い分野を選べば、仕事も多いということですか?



そうとは限りません。就業者数は分類の粗さを映す値なので、発注が起きているかどうかは募集情報のほうで確かめます。
確認は二段です。職業データベースでは手元のタスク、必要なスキル、隣接職業を確認します。募集情報と既存顧客の言葉で、名乗りの粒度と今の発注条件を確かめます。
job tagはタスクと隣接職業を見る
Aさんが候補にした2つの職業ページを開きます。参照したページは次の2つです(2026-08-14参照)。厚生労働省 job tag Webデザイナー/厚生労働省 job tag Webマーケティング
ページには仕事内容、細かなタスク、仕事で求められるスキル、類似する職業が載っています。Aさんは、直近12か月の案件から抽出した作業と重なる箇所を探し、募集を探すための語に置き換えます。
統計欄の分類には注意が要ります。Webデザイナーの統計は「ウェブデザイナー」等、Webマーケティングの統計は「企画・調査事務員」等に対応しています。job tagも、統計データがその職業だけを表すとは限らないと注記しています。
就業者数の大小や対応分類の粗さから、外向けの名乗りや外注需要を決めることはできません。ここで使うのは、手元の経験と重なるタスク・スキル、次に確認する隣接職業だけです。
候補ごとにメモを1枚にまとめる
候補の職業ページを開いたら、次の形式で1行ずつ埋めます。下の2行はAさんの記入例です。
| 職業ページ | job tagで確認した内容 | 手元の実績との重なり | 募集10件で試す語 | 参照日 |
|---|---|---|---|---|
| Webデザイナー(Web制作会社) | 依頼主との条件確認、Webサイトの制作・修正 | サイト更新、文言修正、フォーム改修 | サイト更新運用、WordPress更新、フォーム改修 | 2026-08-14 |
| Webマーケティング(ネット広告・販売促進) | コンテンツ作成、Webサイトの品質管理・修正、効果検証 | 商品ページの文章の書き直し | 商品ページ改善、コンテンツ改善、集客導線 | 2026-08-14 |
この1枚は、職業名をそのまま肩書にするためではなく、手元の経験から募集を探す言葉を増やすために使います。名乗りの粒度は、次の募集10件に繰り返し出る職種・作業語と、過去の相談メールや打ち合わせで顧客が使った言葉を並べて決めます。
検索語は3つの語をつなげて作る
第二段は、自分で募集情報を検索する作業です。詰まりやすいのは検索語なので、組み立て式を固定します。業界軸の語、職種スキル軸の語、条件語の3つをつなげます。
- 士業 サイト 更新 運用 業務委託
- 学習塾 ホームページ 更新 外注
- EC 商品ページ ライティング 継続
条件語を変えると見える層が変わります。「業務委託」は企業側の募集、「外注」は小規模事業者の相談、「継続」は反復発注の有無に効きます。
取引のない業界へ広げるときは、既存の取引先と商習慣が近い隣接業界から選びます。税理士事務所が取引先なら、社労士事務所や司法書士事務所が近い位置です。検索語の業界語だけ差し替えて、件数と条件の書きぶりを比べます。
媒体は候補の性質に合わせて選びます。月数万円のスポットや小規模な運用代行の場合、エージェント系は週3〜5日の常駐案件が中心で取扱領域が違うため、母数に数えません。
- クラウドソーシング系(クラウドワークスなど):作業内容が細かく書かれ、単発と継続の別が読み取りやすい
- 企業の採用・募集ページ:業界軸の語と相性がよく、社内で何を外に出したいかが分かる
- 地域の事業者募集や紹介、既存客の周辺:小規模運用はここに集まりやすく、媒体検索では見えない
件数は、募集中だけに絞った状態で数えます。終了案件の表示有無で数が数倍変わるため、媒体をまたいで件数どうしを比べることはしません。同じ媒体で、同じ条件の時系列比較にだけ使います。
- 10件未満なら、語が細かすぎるので条件語を1つ外して1段広げる
- 数百件出るなら、業界軸の語を足して絞り直す
- 候補に合う媒体で10件未満のままなら、その候補は次章の「需要の継続性」を1点にする
10件を4項目で控える
表の上に検索語とヒット件数を1行書き、上から10件を開いて次の4列を埋めます。以下はAさんの記入例で、実際に検索して得た件数ではありません。
Aさんの想定では、検索語は「士業 サイト 更新 運用 業務委託」、募集中に絞ったヒット件数は40件前後です。
| 媒体の種類 | 募集タイトル・依頼文の職種語 | 繰り返し出る作業語 | 提示条件(金額・期間・稼働の記載) |
|---|---|---|---|
| クラウドソーシング | Webサイト運用担当 | WordPress更新、バナー差し替え | 月額固定の記載あり・期間の記載あり・稼働量の記載なし |
| 企業の募集ページ | Web担当 | お知らせ更新、簡易レポート | 単価の記載なし・稼働は週◯時間と明記 |
| 地域の事業者募集 | ホームページ更新代行 | ページ追加、写真差し替え | 1件ごとの単価あり・継続の記載なし |
残りの7行を同じ形式で埋めると、10件で40マスです。Aさんの記入例では、月額固定の記載が10件中4件あり、これが継続性の点数の根拠になりました。
最後に、既存顧客が依頼時に使った言葉を横へ書きます。Aさんの場合は「お知らせの更新が止まっている」「料金ページだけ直したい」でした。
募集側に繰り返し出る「サイト更新」と、顧客側の「更新が止まっている」が重なるため、「士業事務所向けのサイト更新運用」を名乗りの候補にします。
件数を数えないまま10件読むと、母数の違う候補を同じ土俵で採点してしまいます。
金額そのものは案件ごとに違うため、平均単価を出そうとせず、確認できた範囲の記述にとどめてください。
※ここから先は予測を含みます(募集の件数と条件について)。同じ検索を3か月後に繰り返すと、件数も条件も変わる可能性があります。検証中も30日ごとに同じ手順で引き直す前提で進めてください。
候補を一つに絞る評価軸と優先順位



合計点がいちばん高い候補を選べばよいですか?



合計だけでは決めません。最優先軸の「実績との距離」が1点の候補は、合計が高くても外してください。
最優先は「今日から名乗れるか」です。独立1〜3年目は、売上が落ちた時点で検証そのものが止まります。
採点の前に、手順1と手順2で確認したタスク、手順3で拾った募集語と顧客の言葉を、2軸の名乗り文に組みます。
「士業事務所向けのサイト更新運用」のように、業界軸か課題軸を1つ、職種スキル軸を1つ並べた1文にします。ここで文にならない候補は、まだ言葉が粗いということです。
組んだ名乗り文ごとに、次の4軸を3点満点で採点します。満点は12点です。点数は等重みで、軸の重みは点数ではなくルールのほうで表現します。
| 評価軸(上ほど重い) | 3点 | 2点 | 1点 | 見るもの |
|---|---|---|---|---|
| 実績との距離 | 今日から名乗れる | 1〜2か月の練習で名乗れる | 半年の学習が要る | 過去12か月の案件一覧 |
| 需要の継続性 | 反復発注が読み取れる | 反復の記載はないが同種の募集が10件中3件以上 | 単発のみ、または合う媒体でヒット10件未満 | 募集10件のメモ |
| 価格が下がりにくいか | 成果を件数や金額で語れる、または判断や現場での確認を伴う | 作業範囲を定義して固定額にできる | 生成AIで内製でき、時間でしか語れない | 提示条件と成果指標 |
| 続けられるか | 作業後も余力が残る | 疲れは残るが翌日には戻る | 終わると何もできない | 直近3か月の実感 |
合格ラインや後述の行動量は、著者が検証を回せる最小量として設計した目安です。統計から導いた数値ではありません。
採点例と着手の判定ルール
Aさんが3候補を採点した内訳です(記入例)。点の横に、なぜその点にしたのかを添えています。
| 候補 | 実績との距離 | 需要の継続性 | 価格の下がりにくさ | 続けられるか | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 士業事務所向けのサイト更新運用 | 3(税理士事務所1社で1年続けた作業) | 3(10件中4件に月額固定の記載) | 2(成果指標はないが範囲を定義できる) | 3(作業後も余力が残る) | 11 |
| 学習塾向けの集客導線の文章設計 | 2(実績1件で練習が要る) | 2(同種3件・反復の記載なし) | 3(問い合わせ件数で語れる) | 3(負荷は軽い) | 10 |
| EC事業者向けの広告運用 | 1(運用の実務経験なし) | 3(募集が多い) | 3(費用対効果で語れる) | 2(数値管理で消耗する) | 9 |
判定は次のルールで機械的に行います。
- 最優先軸が1点の候補は、合計が高くても外します(上の表では3つ目が該当)
- 合計9点以上で90日検証に進む。9点未満しか残らないなら、候補の粒度を変えて出し直す
- 上位2つが同点なら、実績との距離の点が高いほうを採る。それも同じなら、募集10件のうち今の実績のまま応募できる件数が多いほうにする
外した候補は消さずに残します。軸変更になったときの移動先になります。
学習が要る候補を2軸目に回す
需要が大きく、価格も落ちにくい分野は魅力的に見えます。ただし学習に半年かかる候補を選ぶと、その間の売上を既存案件で支え続けることになります。
稼げる分野より、来週から名乗れる分野を先に取ります。学習が要る候補は消える選択肢ではありません。90日の検証で足場を作ったあと、2軸目として重ねれば間に合います。
浅い実績でも誇大にならない名乗り方



実績が少ないのに専門と名乗ると、誇大になりませんか?



誇大になるのは件数ではなく、自分が関与していない成果を書くときです。作業内容と対応範囲だけで書けば言い切れます。
実績3〜5件で名乗ると誇大になる、という感覚には理由があります。誇大になるのは件数の少なさではありません。自分が関与していない成果を、実績として書くときです。
作業内容と対応範囲だけで書けば、件数が少なくても言い切れます。
| 誇大になる書き方 | 言い切れる書き方 | 変えた点 |
|---|---|---|
| Web集客のプロ | 士業事務所のサイト更新運用を代行します。直近1年で1社、文言修正まで対応 | 対象と作業と対応範囲を出した |
| 売上を2倍にします | フォーム改修と導線の文言修正まで担当し、改修後の件数は計測して共有します | 成果の約束を、自分が動かせる作業と計測に置き換えた |
実績が少ないときに守る4つのルール
書き方を次の4つに固定すると、判断に迷いません。
- 社数ではなく作業内容で書く:何をどこまでやるかを先に書き、件数は後ろに置く
- 成果は関与した範囲に限る:案件全体の成果ではなく、自分が触った工程の結果だけを書く
- 前職の業務は業務と明記する:会社員時代の担当業務は、受注実績と混ぜずに区別して書く
- 数えられない語を使わない:「多数」「豊富な」「幅広い」は、確認できないので外す
この4つは、採点表の「実績との距離」で3点をつけた根拠を、そのまま文にする作業です。できあがった1文は、プロフィールの1行目、提案書の冒頭、見積書の件名の3か所に同じ言葉で置きます。
見積を対応範囲の固定額に変える
名乗りを変えたら、見積の形も変えます。作業時間で売っているかぎり、相手が比べるところは時間の安さだけになるからです。下の表はAさんの記入例です。
| 項目 | 作業時間ベース(変更前) | 対応範囲を定義した固定額(変更後) |
|---|---|---|
| 見積の単位 | 更新作業 1時間あたり2,500円 | サイト更新運用 月額50,000円(想定15時間) |
| 含む範囲 | 依頼のつど作業 | 月4回までの更新、文言修正、フォームの不具合対応 |
| 含まない範囲 | 記載なし | デザインの作り直しと新規ページ制作は別見積 |
| 税の表示 | 記載なし | 税抜表示と明記し、インボイス登録の有無も併記 |
| 相手が見るもの | かかった時間 | 任せられる範囲と、毎月の固定費 |
金額は税抜か税込かを書きます。相手が仕入税額控除でいくら引けるかは、こちらのインボイス登録の有無で変わるため、見積に登録の有無を書いておくと確認が1往復減ります。
下限は、雇用者向けの求人賃金ではなく、自分の必要売上から作ります。直近3か月の事業経費、生活費、税・社会保険料の積立、予備費を足して月の必要売上を置き、同じ3か月に実際に請求できた時間の平均で割ります。
Aさんの必要売上を月30万円、請求できる時間を月100時間と置くと、下限の目安は1時間3,000円です。
変更後の月額5万円を想定15時間で割ると約3,333円なので、この目安を下回りません。いずれも計算方法を示すための仮定で、必要額と税負担は人によって変わります。
固定額を想定作業時間で割った数字が自分の下限を下回るなら、含む範囲か価格を見直します。これは赤字を避けるための床であって、目標ではありません。
ここで扱うのは新規に出す見積の書き方だけです。既存客への値上げ交渉は、比率を下げる話と同時に持ち出すと関係の調整が難しくなるため、この記事では扱いません。
90日で検証して続けるか変えるか決める



90日で問い合わせが増えなければ、失敗ということですか?



件数の合計では判定しません。提案通過率と返信率が開始日の水準以上なら継続、下回ったら言い換えに進みます。
決めた当日にやることは、宣言ではなく記録の準備です。
戻る条件を先に書いておくと、決断はいつでも引き返せる試行になります。
決めた当日に記録する5つの指標
次の表を作り、開始日の値を入れます。空欄では判定ができません。下の記入例はAさんの数字です。
| 指標 | 開始日(必須) | 30日 | 60日 | 90日 |
|---|---|---|---|---|
| 新規問い合わせ件数(月) | 1件 | |||
| 提案通過率(受注数÷提案数) | 10%(提案10件・受注1件) | |||
| 返信率(返信数÷提案数) | 20%(提案10件・返信2件) | |||
| 平均単価(受注1件あたり) | 4.5万円 | |||
| 作業後の消耗度(5段階) | 3 |
開始日の提案通過率と返信率は、開始前90日の提案数・返信数・受注数から計算します。数え方は次の3つで固定します。
- 問い合わせ:メール、フォーム、DM、紹介での初回接触。こちらから送った営業メールへの返信は数えません
- 提案:媒体経由で新規に送ったものだけを分母にします。既存取引先への追加提案と紹介案件は別に数えます
- 消耗度:5が「翌日も動けない」、1が「余力が残る」。案件を終えた日に、その場で書き込みます
消耗度を入れているのは、続けられるかどうかが数字に出ないまま崩れるためです。
新規に充てる週6〜8時間の使い方
時間を確保しても、中身が決まっていなければ記録表だけが残ります。90日で提案30件、週にすると2〜3件を行動量の目安にします。この30件が、提案通過率の分母です。
| 毎週続けること | 頻度 | 週の目安時間 |
|---|---|---|
| 募集を探して提案文を書く | 週2〜3件 | 3〜4時間 |
| 返信対応と見積作成 | 返信があるつど | 2〜3時間 |
| 記録表の更新 | 案件完了ごとと月末 | 0.5時間 |
| 検索条件とヒット件数の引き直し | 30日ごと(週あたり換算) | 0.5時間 |
合計で週6〜8時間です。これとは別に、開始30日以内に一度だけやることが2つあります。
- 既存取引先への告知:1社あたり30分、全社で合計1〜2時間
- 決めた名乗りでの事例ページを1本準備:原稿作成に2〜3時間(承諾待ちの期間は除く)
この2つは毎週かかる時間ではありません。最初の30日だけ提案を週2件に落とせば、上の枠内で吸収できます。
事例ページを書く前に、業務委託契約、制作契約、秘密保持契約と、取引先が定めた公開条件を確認します。取引先名だけでなく、業種、規模、施策、数値から相手を推測できる場合もあります。
契約や公開条件上、取引先の承諾が必要なら書面で承諾を得ます。必要な承諾を得られない事例は公開しません。匿名化は承諾の代わりにはならないため、匿名なら載せてよいと自己判断しないでください。
続けるか変えるかの分岐条件
90日で見るのは、問い合わせ件数の合計ではありません。名乗りを変えた効果が指名や検索に出るには90日は短く、しかも提案を増やせば件数は自動的に増えるため、名乗りの当否と切り分けられないからです。
提案1件あたりの反応で判定します。
- 継続:提案通過率と返信率が、どちらも開始日の水準以上(同じ値なら継続に含みます)
- 言い換え:どちらか一方でも開始日の水準を下回った。現在の2軸のうち、反応が弱いと考える1軸だけを変更して、次の90日へ
- 判定保留:90日間の提案が25件未満。行動量が足りていないので、件数を満たしてから判定します
軸変更を決めるのは6か月時点です。言い換えた2回目の90日でも両方が開始日の水準を下回ったら、採点表に残した2位の候補へ移します。
問い合わせ件数と平均単価は参考として記録し、判定には使いません。開始前90日の提案が10件未満の人は、1件の増減で率が大きく振れるため、90日を2回続けてから判定してください。
既存案件を残す配分と下振れの線
移行期は、既存の売上を丸ごと入れ替えないでください。稼働時間の配分を先に決め、30日ごとに1割ずつ動かします。
| 期間 | 既存と新規の稼働比 | 新規に充てる時間の目安 |
|---|---|---|
| 開始〜30日 | 8対2 | 週6〜8時間 |
| 31〜60日 | 7対3 | 週9〜12時間 |
| 61〜90日 | 6対4 | 週12〜16時間 |
時間の目安は、総稼働が週30〜40時間の場合の換算です。稼働がこれより短い人は、比率だけを守って時間は自分の総量から計算してください。
月商が開始前3か月平均の8割を下回った月は、新規の稼働比を前月の水準に戻します。翌月に8割へ戻れば、また1割ずつ進めます。
このルールがあると、収入が落ちる恐れは、いくらまで落ちたら止めるかという決まった数字に変わります。
既存取引先への伝え方と反応の読み方
断ると次が来ない不安があるほど、この連絡は先送りになります。伝える内容を4文に固定すると、関係を壊さずに比率を下げられます。
- 今後は◯◯(業界)の◯◯(作業)を中心にお受けする形にしていきます
- これまでいただいている◯◯のご依頼は、これまでどおり継続してお受けします
- 新しくいただくご依頼は、この領域を優先して順番を調整させてください
- 御社で◯◯に当てはまる困りごとがあれば、先にご相談いただけると助かります
契約書で業務範囲や稼働量、対応順を決めている取引先では、順番の調整が契約内容の変更に当たることがあります。その場合は一方的な連絡で済ませず、合意のうえで進めてください。
返ってきた言葉は、次の90日を読むのに使えます。
- 「うちだとこれが該当するかも」と具体名が返ってきたら、その領域の困りごとが身近にある兆しです
- 「今までどおり何でも頼みたい」だけが返ってきたら、相手のなかで名乗りが困りごとと結びついていないので、言い換えを検討します
伝えるのは守備範囲の変更であって、取引の終了ではありません。
なお、フリーランス・事業者間取引適正化等法(特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律)は、発注する側の義務を定めた法律です。取引条件を書面などで明示する義務は、業務委託をする事業者全般にかかります。
いっぽう、報酬の支払期日についての義務がかかるのは、従業員を使用する発注事業者(特定業務委託事業者)です。
公正取引委員会の2026年1月改訂資料では、支払期日は受領日から60日以内のできる限り早い日に定めるとしています。
従業員を使用しない発注事業者には、この支払期日の義務は適用されません。
また、同資料は中途解除や不更新の予告義務も説明しています。
対象は、従業員を使用する発注事業者がフリーランスへ6か月以上の期間行う業務委託です。契約更新によって6か月以上続くものも含まれます。
解除や不更新のときは、例外事由に当たる場合を除き、原則として少なくとも30日前までに予告します。方法は書面、ファクシミリ、電子メール等です。災害などで予告が困難な場合や、フリーランス側の責めに帰すべき事由がある場合など、事前予告が不要となる例外があります。
出典:公正取引委員会 フリーランス法リーフレット(2026年1月改訂)/奈良労働局 中途解除等の事前予告・理由開示義務
これは発注側の義務です。フリーランス側が専門分野を変える場面では、契約の業務範囲・期間・解約条項を先に確認し、必要な合意や通知を行います。
報酬や取引条件でもめた場合は、厚生労働省委託事業(第二東京弁護士会運営)のフリーランス・トラブル110番などの窓口に事実関係を持ち込みます。税務や社会保険の扱いも、専門の窓口で確認する領域です。
5つの手順を架空のAさんで通す



手順どおりに進めると、表の数字はどうつながるのですか?



架空のAさんの例で通します。実績の分解から採点、90日の判定まで、同じ数字が次の手順の根拠になります。
以下は実在の受注記録ではありません。表の埋め方と数字のつながりを示すために設定した、架空のAさんの通し例です。
| 手順 | Aさんがやったこと | 次に効いたこと |
|---|---|---|
| 実績の分解 | 直近12か月の3件を4項目で書き、更新と文言修正、フォーム改修、ページの書き直しの3タスクを抽出 | 「Web全般」が3つの作業名に割れた |
| 職業ページでタスクを見る | 2ページを2026-08-14に参照し、手元の作業と重なるタスク、スキル、隣接職業を控えた | 募集を探す語が「サイト更新」「WordPress更新」「集客導線」に広がった |
| 募集10件 | 「士業 サイト 更新 運用 業務委託」で募集中に絞って検索し、上から10件を控えた | 月額固定の記載が10件中4件。継続性3点の根拠になった |
| 2軸に組んで採点 | 「士業事務所向けのサイト更新運用」など3候補を4軸で採点し、11点、10点、9点 | 9点は実績との距離が1点で除外。11点に決定 |
| 90日検証 | 開始日の提案通過率10%・返信率20%を控え、30日ごとに稼働比を8対2、7対3、6対4へ動かして提案28件 | 90日後は提案通過率14%(受注4件)、返信率25%(返信7件) |
判定は継続です。提案は28件で目安の30件に届きませんでしたが、25件は超えているので保留にはなりません。提案通過率は10%から14%へ、返信率は20%から25%へ動きました。
どちらも開始日の水準以上で、月商も下振れの線を保てたため、名乗りは変えずに、次の30日も稼働比6対4を維持します。
かりに返信率だけが20%を下回っていたら、判定は言い換えです。業界軸の「士業」は残し、職種スキル軸の「サイト更新運用」を、課題軸の「更新が半年止まっている状態の解消」へ置き換えて、次の90日を回します。
それでも2回目で両方が下回れば、6か月時点で2位の候補へ移ります。
判定に使うのは件数の合計ではなく、提案1件あたりの反応です。
まとめ
- ✓ 2軸で名乗る:業界軸・職種スキル軸・課題軸のうち2つを1文に組みます。1軸では粗く、3軸以上では声がかかる回数が足りません。
- ✓ 実績はタスクまで下ろす:職種名ではなく「更新と文言修正」「フォーム改修」のような作業名まで分解すると、募集情報の条件と照合できます。
- ✓ 需要は募集10件で見る:職業データベースで分かるのは名乗りの粒度と賃金の水準までです。発注が起きているかは募集情報にしか出ません。
- ✓ 先行指標で90日判定:提案通過率と返信率を開始日に記録し、90日後に継続・言い換え・判定保留を機械的に決めます。
専門分野が決まらないのは、自分を掘る作業と発注側を見る作業が接続していないからでした。接続点は、実績を作業名まで下ろすところにあります。
決めるために要るものは、すでに手元の3件のなかにあります。
今日の一歩は、過去12か月の案件から3件を選び、誰の、どんな状態を、何をして、どう変えたかの4項目で書き出すことです。ここまでは30分、手順1の最初のひと区切りです。
書き出しが終わったら、候補の職業ページを開いて、重なるタスク、必要なスキル、隣接職業を参照日つきで控えてください。次に募集10件の職種・作業語と、既存顧客が相談時に使った言葉を並べれば、名乗りに採用する語を選べます。
よくある質問
- 専門分野は何個まで持てますか?
-
最初は1つに絞ってください。90日の検証で継続と判定できてから、2軸目を重ねる順番が現実的です。同時に2つ立てると、どちらの反応が名乗りによるものか切り分けられなくなります。
- 専門分野の変更は何回までしてよいですか?
-
回数の上限はありません。ただし変えるたびに検証がやり直しになるため、判定の時期を先に決めておきます。言い換えは90日ごと、軸そのものの変更は6か月時点を目安にすると、実績が積み上がる前に振り出しへ戻ることを避けられます。
- 業界軸と職種スキル軸は、どちらから決めるとよいですか?
-
職種スキル軸から決めてください。手元の実績をタスクに分解すれば必ず出てくるためです。業界軸は、取引実績のある業界か、その隣接業界から選ぶと、商習慣の説明を省けます。
- 未経験の分野を専門として名乗ってよいですか?
-
実績のない分野を専門として掲げることは避けてください。募集に応募する形で経験を1〜2件つくり、作業内容として書ける状態にしてから名乗りに入れます。学習が必要な分野は、足場ができたあとの2軸目として扱います。
- 屋号やサービス名も、決めた専門分野に合わせて変えるべきですか?
-
急いで変える必要はありません。先に変えるのはプロフィールの1行目、提案書の冒頭、見積書の件名の3か所です。屋号は登記や契約書、請求書の表記にも関わるため、検証を終えて継続と判断してから検討してください。
参考文献・出典
- 厚生労働省 職業情報提供サイト job tag Webデザイナー(Web制作会社)
- 厚生労働省 職業情報提供サイト job tag Webマーケティング(ネット広告・販売促進)
- 公正取引委員会 フリーランス・事業者間取引適正化等法
- 公正取引委員会 フリーランス法リーフレット(2026年1月改訂)
- 奈良労働局 中途解除等の事前予告・理由開示義務
- 厚生労働省委託事業(第二東京弁護士会運営) フリーランス・トラブル110番
最終更新: 2026-08-14。
job tagは仕事内容、タスク、スキル、隣接職業の確認に使っています(参照日2026-08-14)。統計欄の数値から名乗りや外注需要を判断していません。
フリーランス法の施行日は令和6年11月1日です。
2026年1月改訂の公正取引委員会資料では、対象となる発注事業者は報酬の支払期日を受領日から60日以内のできる限り早い日に設定すると説明しています。
6か月以上の継続的業務委託を解除または不更新とする場合は、例外事由に当たる場合を除き、原則として少なくとも30日前までに予告します。









