【図解】一人社長の役員報酬｜決め方・相場・節税を10分で理解

一人社長の役員報酬について、決め方、相場、節税対策を10分で理解できるように解説します。

税務リスクを抑えつつ、資金繰りを安定させる方法を紹介します。

この記事を読むことで、以下のことがわかります。

一人社長が知るべき役員報酬の基礎知識

一人社長にとって役員報酬は、会社と個人の生活を支える重要な要素です。

役員報酬について正しく理解し、適切に設定することが、安定した経営と個人の経済的安定につながります。

役員報酬とは？定義と種類を解説

役員報酬とは、株式会社や合同会社の役員に対して支払われる給与のことです。

役員は経営に携わる重要な役割を果たし、その対価として報酬を受けます。

役員報酬の種類は主に3つあります。

種類	内容
定期同額給与	毎月同額で支払われる給与
事前確定届出給与	税務署に事前に届け出た金額を支払う給与
業績連動給与	会社の業績に応じて変動する給与

中小企業や一人社長の場合、定期同額給与が一般的です。

なぜ役員報酬が重要なのか？会社と個人のメリット

役員報酬は、会社と個人の両方にとって重要な意味を持ちます。

会社側のメリットは以下の通りです。

メリット	内容
経営戦略の安定	役員報酬を固定することで、経営計画を立てやすくなる
資金繰りの安定	毎月の支出を予測しやすくなる
節税効果	適切な役員報酬を設定することで、法人税を節税できる可能性がある

一方、個人側のメリットは以下の通りです。

メリット	内容
生活の安定	毎月安定した収入を得られる
社会保険の加入	社会保険に加入することで、万が一の事態に備えられる
退職金の受給	退職金制度を設けることで、老後の生活資金を確保できる

役員報酬の決め方｜ステップごとの解説

一人社長にとって、役員報酬は重要な経営判断のひとつです。

適切な役員報酬を設定することで、会社と個人の資金繰りを安定させ、税務リスクを抑えることができます。

会社の利益を予測する方法

会社の利益を予測するには、売上高、売上原価、販管費などを分析する必要があります。

過去3～5年間の財務諸表を確認し、売上高の推移、売上原価率、販管費率などを把握します。

さらに、業界の動向や市場の変化を考慮して、来期の売上高を予測します。

売上高から売上原価を差し引いて売上総利益を計算し、そこから販管費を差し引いて営業利益を予測します。

また、営業外収益や営業外費用、特別損益なども考慮して、税引前当期純利益を予測します。

項目	内容
売上高	過去の売上高の推移、顧客数、客単価、リピート率などを分析し、来期の売上高を予測する
売上原価	材料費、仕入原価、労務費などを分析し、売上高に対する売上原価の割合（売上原価率）を把握する
販管費	広告宣伝費、人件費、地代家賃、水道光熱費などを分析し、売上高に対する販管費の割合（販管費率）を把握する
営業利益	売上総利益から販管費を差し引いて計算する。本業での収益力を示す
営業外収益	受取利息、受取配当金など、本業以外で得られる収益
営業外費用	支払利息、為替差損など、本業以外で発生する費用
特別損益	固定資産売却益、災害損失など、臨時的に発生する損益
税引前当期純利益	営業利益に営業外収益を加え、営業外費用と特別損益を差し引いて計算する。法人税等を計算する前の利益

会社の利益を予測することで、役員報酬の適切な範囲を把握できます。

個人の生活費を洗い出す

役員報酬を決める上で、個人の生活費を把握することは非常に重要です。

生活費とは、食費、住居費、光熱費、通信費、保険料、教育費、娯楽費など、生活に必要なすべての費用を指します。

まずは、家計簿アプリやエクセルなどを活用して、日々の支出を記録しましょう。

固定費と変動費に分けて集計することで、無駄な支出を見つけやすくなります。

また、将来のライフプランを考慮して、住宅購入や子供の教育費など、大きな支出に備える必要もあります。

個人の生活費を明確にすることで、必要な役員報酬額を算出できます。

項目	内容
食費	食材費、外食費など
住居費	家賃、住宅ローン、固定資産税、修繕費など
光熱費	電気代、ガス代、水道代
通信費	携帯電話料金、インターネット料金
保険料	生命保険料、医療保険料、自動車保険料など
教育費	子供の学費、習い事代など
娯楽費	旅行代、趣味の費用、交際費など
その他	医療費、交通費、被服費、日用品費など
ライフプラン	住宅購入、子供の教育費、老後資金など、将来の大きな支出

生活費を把握し、将来のライフプランを考慮することで、安心して生活できる役員報酬額を設定できます。

税金と社会保険料を計算する

役員報酬には、所得税、住民税、社会保険料（健康保険、厚生年金）がかかります。

所得税は、所得金額に応じて税率が異なります。

住民税は、所得割と均等割があり、所得割は所得金額に応じて課税されます。

社会保険料は、役員報酬額に応じて計算されます。

税金と社会保険料を計算するには、税務署や社会保険事務所のウェブサイトで公開されている計算ツールを利用すると便利です。

また、税理士に相談することで、より正確な計算と節税対策を行うことができます。

税金と社会保険料を考慮して、手取り額をシミュレーションすることで、必要な役員報酬額を把握できます。

項目	内容
所得税	所得金額に応じて税率が異なる。復興特別所得税も加算される
住民税	所得割と均等割がある。均等割は自治体によって金額が異なる
社会保険料	健康保険料、厚生年金保険料など。役員報酬額に応じて計算される。労使折半で負担する
計算ツール	税務署や社会保険事務所のウェブサイトで公開されている。税理士のウェブサイトにもシミュレーションツールがある
節税対策	小規模企業共済、iDeCo（個人型確定拠出年金）など。税理士に相談することで、最適な節税対策を見つけられる

税金と社会保険料を考慮することで、手取り額を確保し、生活に必要な資金を確保できます。

役員報酬シミュレーションを活用する

役員報酬シミュレーションとは、会社の利益、個人の生活費、税金、社会保険料などを考慮して、最適な役員報酬額を算出するツールです。

税理士事務所のウェブサイトや会計ソフトなどで提供されており、無料で利用できるものもあります。

シミュレーションでは、様々な条件を入力することで、複数の役員報酬案を比較検討することができます。

例えば、会社の利益が変動した場合、個人の生活費が増減した場合など、様々なケースを想定してシミュレーションを行うことで、リスクを回避することができます。

シミュレーション結果を参考に、税理士に相談することで、より最適な役員報酬額を決定することができます。

項目	内容
シミュレーションツール	税理士事務所のウェブサイト、会計ソフト、税務署のウェブサイトなどで提供されている
入力項目	会社の利益、個人の生活費、家族構成、社会保険の種類など
シミュレーション結果	所得税、住民税、社会保険料、手取り額などが表示される
税理士への相談	シミュレーション結果を基に、節税対策や税務上の注意点などを相談する

役員報酬シミュレーションを活用することで、様々な条件を考慮した上で、最適な役員報酬額を決定できます。

役員報酬の相場と平均額

一人社長にとって、役員報酬は重要な経営判断のひとつです。

適切な役員報酬を設定することで、会社と個人の双方にとってメリットがあります。

業種別の役員報酬相場

業種によって役員報酬の相場は異なり、一般的に利益率の高い業種ほど役員報酬も高くなる傾向があります。

たとえば、IT業界や金融業界は、専門知識や高度なスキルが求められるため、役員報酬が高めに設定されているケースが多いです。

一方、飲食業や小売業などの労働集約型産業は、利益率が低いため、役員報酬も比較的低めに設定される傾向にあります。

業種	役員報酬相場	備考
IT業	1,000万円以上	高度な専門知識やスキルが求められるため
金融業	1,200万円以上	高度な専門知識やスキルが求められるため
建設業	700万円程度	比較的安定した収益が見込めるため
飲食業	500万円程度	労働集約型産業であり、利益率が低い傾向があるため
小売業	450万円程度	労働集約型産業であり、利益率が低い傾向があるため

会社規模別の役員報酬平均額

会社の規模（売上高や従業員数）によっても役員報酬の平均額は異なります。

一般的に、売上高が大きい会社ほど役員報酬も高くなる傾向があります。

中小企業庁の調査によると、中小企業の役員報酬の平均額は、年間600万円程度です。

ただし、これはあくまで平均であり、業績の良い会社では1,000万円を超えるケースも珍しくありません。

会社規模	役員報酬平均額	備考
小規模企業	400万円程度	従業員数が少ない会社
中小企業	600万円程度	中小企業庁の調査による
大企業	1,000万円以上	売上高が大きい会社

役員構成による報酬の違い

役員構成（社長、取締役、監査役など）によっても役員報酬の額は異なります。

一般的に、経営責任の大きい社長の報酬が最も高く、次いで取締役、監査役の順になります。

また、非常勤役員の場合は、常勤役員よりも報酬が低めに設定されることが多いです。

役員報酬を決める際は、各役員の役割、責任範囲、貢献度などを考慮し、バランスの取れた報酬体系を構築することが重要です。

役員	報酬額	備考
社長	1,000万円以上	経営責任が最も大きい
取締役	700万円程度	経営に関する意思決定に参加
監査役	500万円程度	企業の監査業務を担当
非常勤役員	300万円程度	勤務時間が短い、または特定の業務のみ担当

役員報酬における節税対策

一人社長にとって、役員報酬は生活の基盤であり、会社の資金繰りにも影響を与える重要な要素です。

定期同額給与の活用

役員報酬を節税する方法のひとつに、定期同額給与の活用があります。

定期同額給与とは、毎月同額の役員報酬を支給する方法です。

税務上のメリット

項目	内容
損金算入	定期同額給与として認められると、法人税を計算する際に役員報酬を損金として算入できます。
節税効果	損金算入により、会社の利益を圧縮し、法人税の節税につながります。
税務調査でのリスク軽減	定期同額給与は税務署のチェックが厳しくないため、税務調査でのリスクを軽減できます。

事前確定届出給与とは？

事前確定届出給与とは、特定の役員に対して、あらかじめ税務署に届け出た上で、定められた時期に一定額を支給する給与のことです。

活用方法

項目	内容
支給対象	取締役、監査役などの役員
支給時期	株主総会などで決議された支給日に支給
支給金額	事前に税務署に届け出た金額
届け出期限	株主総会等の決議日から1ヶ月以内、または会計期間開始の日から4ヶ月以内のいずれか早い日

役員退職金の活用方法

役員退職金は、長年の会社への貢献に対する報奨であり、税制上の優遇措置が設けられています。

節税メリット

項目	内容
所得税の軽減	退職所得控除が適用されるため、所得税を大幅に軽減できます。
相続税対策	退職金を生命保険で準備することで、相続税対策としても活用できます。
法人税の節税	一定の要件を満たす場合、法人税の損金として算入できます。

その他の節税対策

役員報酬以外にも、一人社長が活用できる節税対策はいくつか存在します。

節税対策

項目	内容
小規模企業共済への加入	毎月の掛金が全額所得控除となり、節税効果があります。
iDeCo（個人型確定拠出年金）への加入	掛金が所得控除の対象となり、老後資金を準備しながら節税できます。
生命保険の活用	経営者保険に加入することで、万が一の事態に備えながら、保険料の一部を損金として計上できます。
出張手当の活用	出張旅費規程を作成し、日当や宿泊費などを支給することで、経費として計上できます。
社宅制度の導入	会社が所有または賃貸する住宅を役員に貸与することで、家賃の一部を経費として計上できます。
倒産防止共済への加入	取引先の倒産に備えながら、掛金を損金として計上できます。

一人社長が節税対策を行う際は、税理士などの専門家と相談し、自社の状況に合わせた最適な方法を選択することが重要です。

役員報酬を変更する際の手続き

役員報酬は一度決定したら、簡単に変更できるものではありません。

変更には所定の手続きが必要となり、手続きに不備があると税務上の問題が発生する可能性もあるため注意が必要です。

役員報酬変更のタイミング

役員報酬の変更が認められるタイミングは、原則として事業年度開始から3ヶ月以内です。

これは、税法上の「定期同額給与」というルールを守るために重要になります。

しかし、以下のような例外もあります。

これらの理由により、やむを得ず役員報酬を変更する場合は、税務署に届け出が必要になるケースがあるため、税理士に相談するようにしましょう。

株主総会・取締役会での決議

役員報酬を変更するには、株主総会または取締役会での決議が必須です。

株式会社の場合、役員報酬の決定は株主総会の決議事項とされています（会社法第361条）。

決議機関	内容
株主総会	役員報酬の総額を決定
取締役会	個別の役員報酬額を決定（取締役会設置会社の場合）

株主総会で決定された役員報酬の総額を基に、取締役会で個別の役員報酬額を決定するのが一般的です。

取締役会を設置していない会社では、株主総会で個別の役員報酬額まで決定します。

議事録の作成と保管

株主総会や取締役会で役員報酬の変更を決議した際は、その内容を議事録として作成し、適切に保管する必要があります。

議事録は、税務調査の際に重要な証拠書類となるため、以下の項目を必ず記載しましょう。

議事録は、会社法に基づいて10年間本店に備え置く義務があります（会社法第369条）。

税務署への届け出について

原則として、役員報酬の変更時に税務署への届け出は不要です。

しかし、以下のケースでは届け出が必要になる場合があります。

これらのケースでは、所定の書類を税務署に提出する必要があります。

手続きが複雑になる場合もあるため、税理士に相談しながら進めるのがおすすめです。

よくある質問（FAQ）

役員報酬はどのように決めるのですか？

会社の利益予測、個人の生活費、税金・社会保険料を考慮し、役員報酬シミュレーションを活用して決定します。

役員報酬の相場はどのくらいですか？

業種や会社規模によって異なりますが、中小企業では年間600万円程度が平均です。業績や役員構成によっても変動します。

役員報酬の節税対策にはどのようなものがありますか？

定期同額給与の活用、事前確定届出給与、役員退職金の活用、小規模企業共済への加入などが挙げられます。

役員報酬を変更する際の手続きは？

原則、事業年度開始から3ヶ月以内に株主総会または取締役会で決議し、議事録を作成・保管します。税務署への届け出は原則不要ですが、事前確定届出給与や業績悪化による減額の場合は必要です。

まとめ

一人社長の役員報酬について、この記事では決め方・相場・節税について解説しました。

会社と個人のメリットを踏まえ、税務リスクを抑えながら資金繰りを安定させる方法を理解できます。

この記事を参考に、税理士に相談しながら最適な役員報酬を決定し、会社と個人の安定的な成長を目指しましょう。