【法人化】一人社長が絶対に知るべき株式会社/合同会社設立の手順と節税対策

起業を考える一人社長の方へ。

法人化には、節税や信用力向上など多くのメリットがある一方で、デメリットもあります。

この記事では、株式会社と合同会社の設立手順、法人化のメリット・デメリット、そして節税対策を詳しく解説します。

この記事を読めば、あなたに最適な法人化の形態を選び、スムーズに会社設立を進めるための知識が得られます。

一人社長の法人化｜株式会社と合同会社の設立手順と節税対策

法人化の必要性と全体像

個人事業主としてビジネスを続けてきた方も、法人化を検討する時期かもしれません。

法人化は、単なる形式的な変更ではなく、ビジネスを新たな段階へと進めるための重要な決断です。

法人化とは、個人事業主が個人として行ってきた事業を、法律上の人格を持つ法人に組織変更することを指します。

法人化することで、税制上のメリットや社会的な信用度の向上など、さまざまな恩恵を受けられます。

株式会社と合同会社の選択肢

法人にはいくつかの種類がありますが、一人社長にとって主な選択肢となるのは株式会社と合同会社です。

それぞれに特徴があり、設立の手続きや費用、税制面での扱いが異なります。

比較項目	株式会社	合同会社
設立費用	約20万円〜	約6万円〜
意思決定	株主総会での決議が必要	経営者（社員）の合意で決定
役員の任期	原則として存在	なし
決算公告	義務あり	義務なし
向いているケース	将来的な株式公開（IPO）や大規模な資金調達を目指す場合、社会的な信用度を重視する場合	設立費用を抑えたい場合、柔軟な経営をしたい場合、小規模な事業を行う場合

株式会社は、株式を発行して資金調達を行うことができ、社会的な信用度も高いのが特徴です。

一方、合同会社は設立費用が安く、経営の自由度が高いというメリットがあります。

資本金や事業規模、将来的な目標などを考慮して、どちらの形態があなたにとって適切かを検討しましょう。

法人化の基礎知識｜メリット・デメリットと設立のタイミング

法人化とは、個人事業主が会社を設立し、法律上の人格を得ることを指します。

個人事業主の延長として法人成りする場合や、最初から会社を設立する場合など、さまざまなケースが考えられます。

法人化によるメリット

法人化には、大きく分けて7つのメリットがあります。

メリット	詳細
節税効果	法人税率が所得税率より低い場合があり、節税につながる
社会保険への加入	健康保険や厚生年金に加入できるため、保障が充実する
信用力の向上	法人格を持つことで、金融機関からの融資や取引先の信頼を得やすくなる
事業承継の円滑化	親族や従業員への事業承継がスムーズに行える
有限責任	出資額を上限とする有限責任となるため、リスクを抑えられる
人材確保の有利性	福利厚生の充実により、優秀な人材を確保しやすくなる
決算期の調整	個人の所得税と法人の法人税を考慮して決算期を調整することで、節税効果を高めることが期待できる

法人化によるデメリット

法人化には、5つのデメリットも存在します。

デメリット	詳細
設立費用と維持費	株式会社設立には約20万円、合同会社設立には約10万円の費用がかかる
事務作業の増加	法人税申告や社会保険手続きなど、事務作業が増加する
赤字でも税金が発生	法人住民税の均等割など、赤字でも発生する税金がある
交際費の損金不算入	交際費の一部が損金として認められない場合がある
社会保険料の負担増	役員報酬額によっては、社会保険料の負担が増加する可能性がある

法人化に適したタイミング

法人化を検討するタイミングは、主に3つあります。

株式会社設立の手順｜会社設立freee/マネーフォワードクラウド活用術

株式会社を設立するには、いくつかの段階を踏む必要があり、各ステップを丁寧に進めることで、スムーズな会社設立が可能です。

定款の作成と認証

定款は、会社の目的、商号、本店所在地、資本金額などを記載したもので、会社の憲法とも言える重要な書類です。

定款の作成は、会社設立の最初のステップであり、株式会社 freeeや株式会社マネーフォワードクラウドなどのサービスを利用することで、簡単かつ効率的に作成できます。

株式会社を設立する際、紙の定款では4万円の収入印紙が必要ですが、電子定款を利用すれば印紙代を節約できます。

電子定款は、電子署名や電子証明書が必要になるため、準備が必要です。

項目	内容
絶対的記載事項	事業目的、商号、本店所在地、設立時の出資者の氏名または名称・住所、発行可能株式総数、設立時の発行済株式数と払込金額
相対的記載事項	現物出資、財産引受、発起人の報酬など、定款に記載しないと効力が発生しない事項
任意的記載事項	事業年度、株式譲渡制限、役員の任期など、法律で定められていないが会社で自由に定められる事項

スムーズな会社設立のため、専門家やサポートツールを活用し、正確な定款を作成しましょう。

法人印鑑の作成と資本金の払い込み

会社設立には、代表者印、銀行印、角印の3種類の法人印鑑が必要になります。

代表者印は、会社の実印として、法務局への登録や重要な契約に使用します。

銀行印は、金融機関との取引に使用し、預金口座の開設や小切手の発行などに必要です。

角印は、請求書や領収書などの日常業務で使用されます。

資本金は、会社の事業活動の元手となる資金であり、1円から設定できます。

資本金の払い込みは、発起人の個人口座に資本金相当額を振り込み、通帳のコピーを保管することで証明します。

印鑑の種類	使用場面
代表者印	法務局への登録、重要な契約
銀行印	金融機関との取引、預金口座の開設
角印	請求書、領収書、日常業務
資本金	会社の事業活動の元手、1円から設定可能

資本金は、事業計画や許認可の要件に応じて適切な金額を設定することが大切です。

登記申請の手続きと必要書類

登記申請は、会社設立の最終段階であり、法務局に必要書類を提出して会社を正式に設立する手続きです。

登記申請には、定款、発起人決定書、取締役の就任承諾書、印鑑届書など、多くの書類が必要になります。

これらの書類は、法務局のウェブサイトからダウンロードできます。

登記申請は、自分で行うことも可能ですが、専門知識が必要なため、司法書士や会社設立代行サービスに依頼することも可能です。

専門家に依頼することで、スムーズかつ確実な登記申請が可能になります。

書類名	概要
登記申請書	会社の基本情報を記載する書類
定款	会社の基本ルールを定める書類
発起人決定書	発起人の意思決定を記録した書類
取締役の就任承諾書	取締役が就任を承諾したことを証明する書類
印鑑届書	会社の印鑑を登録するための書類

必要な書類を事前に確認し、不備がないように準備することで、スムーズな登記申請を実現できます。

合同会社設立のメリット｜株式会社との違いを徹底比較

合同会社は、株式会社と比較して設立費用が安く、手続きが簡素である点が魅力です。

合同会社の設立費用と手続き

合同会社の設立費用は、株式会社に比べて大幅に抑えることが可能です。

株式会社の設立には、定款認証費用や登録免許税など、約20万円程度の費用がかかります。

一方、合同会社では定款認証が不要なため、登録免許税6万円と印紙代4万円（電子定款の場合は不要）のみで設立できます。

合同会社の設立手続きは、以下のとおりです。

手順	内容
1. 定款の作成	会社のルールブックとなる定款を作成します。
2. 資本金の払い込み	資本金を払い込み、払い込み証明書を作成します。
3. 設立登記申請	法務局に設立登記申請を行います。

合同会社の運営と決算

合同会社の運営は、株式会社に比べて柔軟性が高い点が特徴です。

合同会社では、社員（出資者）全員が会社の業務執行権を持ち、意思決定に参加できます。

また、株式会社のような株主総会が不要で、社員間の合意に基づいて迅速な意思決定が可能です。

決算については、株式会社のような決算公告の義務はありません。

項目	合同会社	株式会社
意思決定機関	社員全員	株主総会
決算公告義務	なし	あり
役員の任期	なし	原則あり

株式会社から合同会社への変更

株式会社から合同会社への組織変更は、一定の手続きを踏むことで可能です。

組織変更を行うことで、経営体制の簡素化やコスト削減などのメリットが期待できます。

ただし、組織変更には債権者保護手続きや登録免許税などの費用がかかるため、事前に専門家へ相談するのがおすすめです。

手順	内容
1. 特別決議	株主総会で組織変更に関する特別決議を行います。
2. 債権者保護手続き	官報公告や個別催告により、債権者に対する保護手続きを行います。
3. 組織変更登記申請	法務局に組織変更登記申請を行います。

法人化後の節税対策｜一人社長が知っておくべき税務のポイント

一人社長が法人化を行った後、税務の知識は事業を円滑に進めるために欠かせません。

適切な節税対策を行うことで、会社に残る資金を増やし、更なる事業の成長に繋げることが可能です。

役員報酬の設定と社会保険料

役員報酬を決める際、個人の所得税と法人の法人税、両方のバランスを考慮する必要があります。

個人の所得税は累進課税制度であり、所得が高くなるほど税率も高くなります。

一方、法人の法人税率は一定ですが、役員報酬を高く設定しすぎると、法人の利益が減り、事業に必要な資金が不足する可能性があります。

具体的には、以下の要素を考慮して役員報酬を設定しましょう。

考慮要素	詳細
個人の所得税率	所得税は累進課税のため、所得が高くなるほど税率が上がります。
法人の法人税率	法人税率は一定ですが、資本金や所得によって税率が異なります。
社会保険料	役員報酬に応じて社会保険料が決まります。
会社の資金繰り	役員報酬を高く設定しすぎると、会社の資金繰りが悪化する可能性があります。
節税効果	役員報酬を調整することで、所得分散による節税効果が期待できます。
税務調査のリスク	不相当に高額な役員報酬は、税務調査で否認される可能性があります。

税務の専門家である税理士に相談することで、最適な役員報酬の設定や社会保険料に関するアドバイスを受けることが可能です。

経費計上のルールと注意点

法人化後、事業に必要な支出は経費として計上できます。

経費を適切に計上することで、課税所得を減らし、法人税を節約することができます。

経費として認められる範囲は、以下の通りです。

経費の種類	詳細
人件費	役員報酬、給与、賞与、退職金、福利厚生費
旅費交通費	出張旅費、交通費、宿泊費
交際費	接待交際費、会議費、贈答費
通信費	電話代、インターネット代、郵送費
消耗品費	事務用品、備品、工具器具
広告宣伝費	チラシ作成費、ホームページ作成費、広告掲載費
賃借料	事務所家賃、駐車場代、機械装置リース料
修繕費	建物修繕費、機械装置修理費
減価償却費	建物、機械装置、車両運搬具などの固定資産の減価償却費
税金	事業税、固定資産税、自動車税など
保険料	火災保険料、自動車保険料、労災保険料など
その他	研修費、図書費、新聞図書費、水道光熱費など

注意点として、プライベートな支出や事業に関係のない支出は、経費として計上できません。

また、領収書や請求書などの証拠書類を保管しておくことが重要です。

税務調査で経費の正当性を証明する必要があるため、日頃から証拠書類を整理しておきましょう。

消費税の仕組みとインボイス制度への対応

消費税は、商品やサービスの販売時に課税される税金です。

法人化した場合、原則として消費税の納税義務が生じます。

ただし、設立当初は免税事業者となるケースもあります。

インボイス制度（適格請求書等保存方式）は、2023年10月1日から始まった消費税の仕入税額控除に関する制度です。

インボイス（適格請求書）とは、売手が買手に対して発行する請求書で、一定の記載事項を満たす必要があります。

インボイス制度への対応として、以下の点に注意が必要です。

対応事項	詳細
適格請求書発行事業者の登録	消費税の課税事業者である場合、適格請求書発行事業者として税務署に登録する必要があります。
インボイスの保存	仕入税額控除を受けるためには、取引先から受領したインボイスを適切に保存する必要があります。
会計処理の変更	インボイス制度に対応した会計処理を行う必要があります。
消費税の申告	消費税の申告書を作成する際、インボイスに基づいて仕入税額控除の計算を行う必要があります。

インボイス制度は、一人社長にも大きな影響を与える可能性があります。

制度の内容を理解し、適切に対応することで、税務上の不利益を避けることができます。

法人銀行口座の開設と事業計画書の作成

法人銀行口座の開設と事業計画書の作成は、一人社長が法人として事業を始める上で欠かせないステップです。

法人口座開設の審査と必要書類

法人口座の開設は、事業の信頼性を高める上で非常に重要です。

法人口座開設の審査では、主に以下の点がチェックされます。

審査項目	詳細
会社の実態	事業内容や活動状況が明確であるか
代表者の信用情報	代表者の個人信用情報に問題がないか
会社の財務状況	資本金や事業計画に無理がないか
本人確認	登記簿謄本や印鑑証明書などの書類で確認

スムーズな口座開設のため、以下の書類を準備しましょう。

これらの書類を事前に準備しておくと、手続きがスムーズに進みます。

事業計画書の作成ポイントと活用方法

事業計画書は、企業の将来の目標や戦略を具体的に示す重要な書類です。

事業計画書を作成する際には、以下のポイントを意識しましょう。

事業計画書は、融資や助成金の申請、従業員の採用、事業提携など、様々な場面で活用できます。

融資や助成金の申請について

法人化後、事業を拡大するためには、外部からの資金調達が必要になる場合があります。

融資や助成金は、事業の成長を支援する制度であり、積極的に活用しましょう。

主な資金調達方法として、以下のものがあります。

資金調達方法	特徴
銀行融資	低金利で借り入れできるが、審査が厳しい
制度融資	信用保証協会の保証付きで、中小企業が借りやすい
助成金・補助金	返済不要な資金が得られるが、審査が厳しい
クラウドファンディング	インターネットを通じて資金を募る

融資や助成金の申請には、事業計画書や財務諸表などの書類が必要になります。

事前にしっかりと準備し、専門家（税理士や中小企業診断士）に相談しながら進めることをおすすめします。

よくある質問（FAQ）

法人化すると社会保険料はどれくらいになりますか？

役員報酬によって社会保険料は変動しますが、法人化することで、健康保険と厚生年金に加入することが義務付けられます。

法人化の手続きは自分でもできますか？

はい、ご自身でも可能ですが、専門知識が必要となるため、司法書士や会社設立代行サービスに依頼することもできます。

法人化後、税務署への届け出は何が必要ですか？

法人設立届出書や青色申告の承認申請書など、さまざまな書類を税務署に提出する必要があります。

法人化した場合、個人のクレジットカードを会社の経費として使えますか？

原則として、法人名義のクレジットカードを作成し、会社の経費は法人口座から支払うようにしましょう。

まとめ

一人社長の法人化について、設立の手順、メリット・デメリット、節税対策を解説します。

この記事を読むことで、最適な法人形態を選び、スムーズな会社設立を進めるための知識が得られます。

この記事を参考に、法人化に向けた準備を始めましょう。

専門家への相談も視野に入れ、確実なステップを踏み出してください。