フランチャイズ契約のトラブルで最も重要なのは、冷静に初動で証拠を確保することです。
この記事は、優先対応の3ステップと具体的な証拠集め、契約書チェックポイント、内容証明郵便や弁護士・ADR・訴訟の手続きと費用目安、相談先を実践的にまとめています。

ロイヤリティ請求や営業地域侵害、突然の契約解除にどう対処すればいいですか?



まずは契約書とやり取りの記録を整理し、証拠を固めた上で優先対応の3ステップに沿って行動します。
- 優先対応の3ステップと初動チェックリスト
- 契約書の不利条項チェックポイント
- 証拠の具体的収集方法と整理フォーマット
- 交渉・ADR・訴訟の手順と費用目安
フランチャイズ契約トラブルの現状とよくある8つの事例
フランチャイズ契約でトラブルが発生した際、最も重要なのは感情的にならず、冷静に初動対応することです。
どのような問題が起こりうるのか、まずはよくある8つの事例を把握することから始めましょう。
これから解説するフランチャイズ契約トラブルの事例を知ることで、ご自身の状況を客観的に判断し、次に取るべき適切な行動を具体的にイメージできるようになります。
まずは冷静に状況を把握するための優先順位
トラブルの渦中にいると、何から手をつけて良いか分からなくなりがちです。
しかし、こんな時こそ客観的な事実を時系列で整理することが、解決への第一歩となります。
具体的には、①身の安全と事業継続の確保、②契約書と証拠の保全、③被害状況の記録という優先順位で行動することが重要です。
この初動対応が、後の交渉や法的手続きを有利に進めるための土台を築きます。
優先順位 | 対応内容 | 具体的な行動 |
---|---|---|
1 | 安全と事業の確保 | 従業員や顧客の安全を最優先し、可能な限り通常営業を継続 |
2 | 契約書と証拠の保全 | フランチャイズ契約書原本、メール、請求書などをすべて確保 |
3 | 被害状況の記録 | いつ、どこで、誰が、何をしたか、被害額などを時系列で記録 |



何から手をつければいいのか分からなくてパニックになりそう…



まずは落ち着いて、契約書とやり取りの記録を手元に集めることから始めましょう。
この初期対応を丁寧に行うことが、後の交渉や法的手続きを有利に進めるための土台となります。
ロイヤリティ未払いや加盟金返金の要求
ロイヤリティとは、本部のブランドや経営ノウハウを使用する対価として、加盟店が毎月支払う費用のことです。
売上不振などを理由にロイヤリティの支払いが滞ると、本部から契約不履行を問われ、最終的に契約解除や損害賠償を請求されるケースがフランチャイズトラブル全体の約30%を占めます。
逆に、説明会で提示された見込み売上と実際が大きく異なり、投資回収が困難な場合、加盟店側から加盟金返金を求めるトラブルも発生しています。
トラブル内容 | 加盟店の主張 | 本部の主張 |
---|---|---|
ロイヤリティ未払い | 想定より売上が低く支払えない | 契約に基づく支払い義務の履行要求 |
加盟金返金の要求 | 事前の売上予測が虚偽だった | 事業リスクは加盟店が負うべきもの |
支払いの遅延はフランチャイズ契約 トラブルに直結しやすく、契約違反と判断されることも少なくありません。
支払いが難しい状況に陥ったときは、問題が大きくなる前に早めに本部へ相談しましょう。
その際のやり取りは、必ず書面やメールなどで記録を残しておくことが大切です。
本部による営業地域侵害や不十分な業務指導
テリトリー権とは、契約によって定められた特定の地域で、加盟店が独占的に営業できる権利を指します。
契約でテリトリー権が保障されているにもかかわらず、本部がすぐ近くに直営店や別の加盟店を出店させ、売上が大幅に減少するトラブルは後を絶ちません。
また、スーパーバイザー(SV)と呼ばれる本部担当者からの具体的な業務指導が不足し、店舗運営に支障が出るケースも多く報告されています。



すぐ近くに新しいお店が…これって契約違反じゃないの?



契約書にテリトリー権の記載があるか、すぐに確認してください。
指導不足の具体例 | 発生する問題 |
---|---|
SVの訪問がほとんどない | 経営改善の機会損失 |
質問への回答が遅い・ない | 迅速な問題解決ができない |
現場にそぐわない指示ばかり | 従業員の士気低下、売上悪化 |
新商品情報の提供遅延 | 販売機会の損失 |
業務指導の不足を訴える際は、いつ、誰に、どのような指導を求めたか、そして本部の対応がどうだったかをメールや日報で詳細に記録することが、後の交渉で有利に働く証拠となります。
契約書にない追加費用や初期費用の請求
フランチャイズ契約では、加盟金やロイヤリティ以外にも様々な費用が発生します。
特に注意が必要なのは、契約時に説明されていなかった費用を後から請求される不当な追加請求のトラブルです。
例えば、開業前の研修費や本部指定のシステム利用料、共同広告の分担金など、契約書に記載のない費用を突然請求されるケースがあります。
初期費用に関するフランチャイズ契約トラブルは、加盟店の約15%が経験しているという調査結果も出ています。
- 必須とされていなかったシステムの導入費用
- 高額な追加研修への参加費用
- 目的が不明確な協賛金や販促費
- 本部指定業者からの割高な仕入れ費用
請求書が届いたら、必ず契約書の費用に関する項目と照合してください。
もし契約書に記載のない請求であれば、支払う前に書面でその根拠を明確にするよう本部に説明を求める姿勢が大切です。
説明会での虚偽説明や不十分な情報開示
情報開示書面(法定開示書面)とは、フランチャイズ契約前に本部が加盟希望者へ開示を義務付けられている書類で、事業概要や費用、契約条件、本部の財務状況などが記載されています。
ところが、説明会で示された売上予測が非現実的であったり、本部に不利な情報(過去の訴訟歴など)が意図的に隠されていたりするトラブルは少なくありません。
こうした問題は、多くの場合、加盟してから初めて判明します。
消費者契約法では、重要事項について事実と異なる説明を受けた場合、契約を取り消せる可能性があります。
説明内容 | 隠されていた事実 |
---|---|
「誰でも月商300万円可能」 | 実際の平均月商は120万円 |
「近隣に出店計画はない」 | 半年後に直営店の出店が決定済み |
「ロイヤリティ以外の費用は不要」 | 高額なシステム更新料が毎年発生 |
「訴訟トラブルは一度もない」 | 複数の加盟店と裁判で係争中 |
説明会でのやり取りを録音した音声データや、配布された収支モデルの資料は、本部の説明と実際が異なった場合に「虚偽説明」を立証するための有力な証拠となります。
契約更新時の不当な条件変更トラブル
契約期間の満了が近づくと、事業を継続するために契約更新の交渉が行われます。
このタイミングを狙って、本部が加盟店にとって一方的に不利な条件変更を要求してくることがあります。
例えば、ロイヤリティの大幅な引き上げや、新たな義務の追加、テリトリー権の縮小などです。
特に契約期間が3年から5年と比較的短い契約形態の場合、更新時の条件変更トラブルには十分な注意が必要です。
- ロイヤリティ率の2%引き上げ
- 新たな店舗改装義務の追加(費用は加盟店負担)
- これまで無償だったシステム利用料の有料化
- 競業避止義務の範囲拡大
更新を拒否された場合でも、その理由が客観的に見て正当なものでなければ、本部の権利濫用であると主張できる可能性があります。
不当な条件変更には安易に同意せず、まずは弁護士などの専門家に相談しましょう。
一方的な契約解除通告と高額な違約金
本部からの一方的なフランチャイズ契約解除は、加盟店の生活基盤そのものを揺るがす最も深刻なトラブルの一つです。
実際には軽微な契約違反に過ぎないにもかかわらず、それを理由に突然契約解除を通告され、数千万円単位の高額な違約金を請求されるケースも少なくありません。
契約書に記載されている中途解約に関する違約金の規定は、金額の妥当性を含めて契約前に必ず確認すべき最重要項目です。



もし突然「契約解除だ」と言われたら、どうすればいいの?



まずは解除理由の正当性を確認し、安易に違約金の支払いに応じないでください。
契約解除の理由(本部の主張) | 加盟店が確認すべきこと |
---|---|
ロイヤリティの支払い遅延 | 遅延の回数や期間、是正の機会はあったか |
本部からの指導への不服従 | 指導内容が合理的かつ契約に基づいているか |
ブランドイメージの毀損 | 具体的にどのような行為が問題とされたか |
報告義務の不履行 | 故意ではなく、やむを得ない事情はなかったか |
違約金の額が事業の規模に対して不当に高額である場合、過去の裁判では消費者契約法に基づき減額が認められた判例もあります。
実際にあったフランチャイズ訴訟の判例
過去のフランチャイズ訴訟の判例を知っておくことは、自身の状況を法的にどう評価できるか、またどのような主張が可能かを考えるうえで参考になります。
多くのフランチャイズ契約トラブルは交渉の段階で和解に至りますが、中には訴訟に発展するケースもあります。
その代表例として、コンビニエンスストア「セブン-イレブン」の加盟店オーナーが見切り販売の制限をめぐり本部を訴えた裁判(東京高裁平成22年2月26日判決)が挙げられます。
この事例では、本部による優越的地位の濫用が一部認められました。
事件名(通称) | 争点 | 裁判所の判断(概要) |
---|---|---|
ほっかほっか亭事件 | 本部の商号変更と加盟店の離脱 | 加盟店側の離脱と新ブランドでの営業を認める |
セブン-イレブン見切り販売事件 | 見切り販売の制限が独占禁止法違反か | 本部が優越的地位を濫用し、加盟店の経営の自由を不当に制約したと認定 |
学習塾フランチャイズ事件 | 売上予測の提供義務違反 | 本部が提示した売上予測に合理的根拠がなく、加盟店に損害を与えたとして賠償を命令 |
これらの判例は、加盟店の権利が法的に保護される可能性を示しています。
訴訟に発展すると時間も費用もかかりますが、正当な権利を主張するためには、最終的な選択肢として常に視野に入れておく必要があります。
【原因別】フランチャイズトラブルの優先対応3ステップと初動チェックリスト
トラブル発生時の初動対応で最も重要なのは、感情的にならず冷静に証拠を確保することです。
具体的な手順として、契約書と証拠の保全、内容証明郵便での意思表示、専門家を交えた交渉の準備という3つのステップで進めます。
原因別の証拠集めと、すぐに使えるチェックリストも解説します。
このステップを踏むことで、交渉を有利に進め、被害を最小限に抑えることが可能です。
ステップ1:契約書と証拠の保全
まず、フランチャイズ本部との間で交わした契約書や情報開示書面の原本を、確実に手元に残しておくことが基本です。
さらに、契約書だけではなく、本部とのメールのやり取り、請求書や支払明細、日々の売上データなども重要な資料となります。
これらは最低でも直近1年分をファイルに整理し、保管しておきましょう。



どんなものが証拠になるのか、具体的に知りたいです…



契約書はもちろん、メールやLINEのやり取り、録音データ、写真など、客観的な事実を示すものはすべて証拠になりますよ。
これらの客観的な証拠が、後の交渉や法的手続きにおいてあなたの主張を裏付ける強力な武器となります。
ステップ2:内容証明郵便での意思表示
内容証明郵便とは、いつ、誰が、どのような内容の文書を誰に送ったかを日本郵便が証明してくれるサービスです。
本部に対して契約違反の是正を求めたり、支払いを拒否する意思を伝えたりする場合に活用します。
これにより、「言った・言わない」のトラブルを防ぎ、相手に心理的なプレッシャーを与えて交渉のテーブルに着かせる効果が期待できます。
送付した事実と日付が法的な証拠として残るため、時効の中断にもつながります。
項目 | 内容 |
---|---|
送付日 | 文書を送付した年月日 |
差出人情報 | あなたの氏名・住所・連絡先 |
受取人情報 | 本部の名称・代表者名・住所 |
表題 | 「通知書」「要求書」など目的がわかるもの |
本文 | 事実関係、要求事項、要求の法的根拠を明確に記載 |
差出人押印 | 氏名の横に押印 |
文面は感情的にならず、事実と要求を簡潔に記載することが重要です。
作成に不安があれば、弁護士や行政書士に相談しましょう。
ステップ3:専門家を交えた交渉の準備
当事者同士の話し合いで解決が難しい場合、フランチャイズ問題に詳しい弁護士などの専門家に相談し、代理人として交渉してもらう準備を進めます。
弁護士に依頼する場合、相談料は30分5,000円から1万円程度が相場です。
正式に依頼すると着手金として20万円から50万円程度が必要になることが多いですが、法的な観点から最適な解決策を提示してくれます。



弁護士に相談する前に、自分で準備できることはありますか?



はい、トラブルの経緯を時系列でまとめたメモと、集めた証拠を整理しておくと、相談がスムーズに進みますよ。
専門家が介入することで、本部側も真摯な対応を取る可能性が高まります。
無料相談を実施している法律事務所もあるため、まずは気軽に問い合わせてみましょう。
契約条項違反を指摘するための証拠集め
営業地域の侵害(テリトリー権侵害)や競業避止義務違反など、契約書に定められた条項を本部が破っている場合は、その事実を客観的に証明する証拠が必要です。
例えば、契約書で定められた営業地域内に、本部が許可なく直営店や別の加盟店を出店した場合、新店舗の開店チラシ、現地の写真、登記情報などを複数集めることが有効です。
違反内容 | 有効な証拠 |
---|---|
営業地域侵害 | 新店舗の写真、地図、商業登記簿謄本、開店案内 |
競業避止義務違反 | 類似事業を行う別会社の登記情報、ウェブサイトのコピー |
秘密保持義務違反 | 情報が漏洩したことを示すメール、第三者の証言 |
商品供給義務違反 | 発注書と納品書の不一致、欠品を記録した店舗日誌 |
契約書のどの条項に違反しているのかを明確に特定し、それに対応する証拠を揃えることが、交渉を有利に進めるための鍵です。
ロイヤリティや請求に関するトラブルの証拠固め
本部からの不当なロイヤリティ請求や契約書にない費用の請求に対しては、支払い履歴と請求の根拠を照合できる証拠を揃えます。
毎月の請求書に加え、実際に銀行口座から引き落とされた記録や振込の履歴が確認できる通帳のコピーや取引明細を、最低でも2年分は揃えておきましょう。
POSシステムの売上データも、ロイヤリティ計算の正当性を検証するために不可欠です。
証拠の種類 | 確認するポイント |
---|---|
契約書 | ロイヤリティの計算方法、支払い条件、追加費用の記載 |
請求書 | 請求項目、金額、計算根拠が契約書と一致しているか |
支払証明 | 銀行通帳のコピー、振込明細書、領収書 |
売上データ | POSシステムの売上日報、月報 |
請求内容に少しでも疑問を感じたら、すぐに本部に書面で説明を求め、そのやり取りも証拠として保管しておくことが大切です。
本部の指導不足や説明と違う実態の立証方法
SV(スーパーバイザー)による経営指導が契約内容を満たしていない場合や、加盟前に聞いた説明と実際のサポート体制が違う場合には、その実態を示す証拠を集めることが大切です。
たとえば、加盟前の説明会で「月4回のSV訪問」と案内されたのに、実際には1回しか来ていない場合があります。
その際は、SVの訪問記録、店舗日誌、担当者とのメールやLINEのやり取りなどを証拠として残しましょう。
また、売上予測と実際の数字に大きな差がある場合には、情報開示書面と実際の売上データを比較する資料を作成しておくことが有効です。



口頭での約束も証拠になりますか?



口頭の約束は証拠として弱いため、会話を録音するか、後でメールなどで内容を確認する文面を送って記録に残しましょう。
本部のサポート不足によって売上が低下したなど、具体的な損害との因果関係を示すことができれば、損害賠償請求につながる可能性もあります。
すぐに使える初動対応チェックリスト
フランチャイズ契約でトラブルが起きたときは、慌てずにやるべきことを一つずつ確認することが、被害を広げないために重要です。
まずは自身の安全と事業の継続を最優先に考え、そのうえで証拠の保全に進みましょう。
以下の10項目を順番にチェックし、抜け漏れがないか確認してください。
チェック項目 | 完了 |
---|---|
契約書・情報開示書面の原本を確保したか | ☐ |
本部とのメールや文書のやり取りをすべて保存したか | ☐ |
請求書・領収書・支払明細を整理したか | ☐ |
トラブルの経緯を時系列でメモにまとめたか | ☐ |
関連する音声データや写真・動画を確保したか | ☐ |
従業員や関係者からの証言を記録したか | ☐ |
契約書で定められた通知先に書面で意思表示をしたか | ☐ |
国民生活センターや中小企業庁に相談したか | ☐ |
フランチャイズ問題に詳しい弁護士を探したか | ☐ |
感情的な発言や一方的な行動を控えているか | ☐ |
このチェックリストを一つずつクリアしていくことで、問題解決に向けた道筋が見えてきます。
一人で抱え込まず、必ず専門家の力も借りましょう。
契約書の不利な条項を見抜くチェックポイントと法的措置の全手順
フランチャイズ契約のトラブルを解決するには、契約書に潜む不利な条項を見抜き、正しい手順で法的な対応を取ることが何より大切です。
感情的に動いてしまうと、時間や費用を無駄にする結果になりかねません。
ここでは、まず契約書で確認すべき7つの重要な条項を具体的に解説し、トラブルになりやすい競業避止義務の注意点や、クーリングオフ・中途解約の方法も取り上げます。
さらに、弁護士を通じた交渉から裁判外紛争解決手続(ADR)、最終手段である訴訟に至るまでの流れと費用、そして交渉で役立つ是正要求書の雛形まで、段階を追って詳しく見ていきましょう。
この手順に沿って冷静に対応することで、不利な状況を打開し、ご自身の権利を守ることにつながります。
フランチャイズ契約書で確認必須の7つの条項
フランチャイズ契約書は、加盟店よりも本部に有利な内容になっていることが少なくありません。
契約後に「知らなかった」と後悔しないために、契約締結前に隅々まで条項を確認し、少しでも疑問があれば解消しておく必要があります。
特に、加盟店の義務や費用、契約解除に関する項目は、将来のトラブルに直結する可能性があるため注意深く読み解きましょう。



契約書って、どこを重点的に見ればいいの?



特に「中途解約」と「違約金」の項目は、万が一の事態に備えて必ず確認してください。
特に重要な7つの条項について、確認すべきポイントを以下にまとめました。
条項 | チェックポイント |
---|---|
契約期間と更新条件 | 自動更新か、更新時の条件変更はないか |
ロイヤリティ | 算定基準は明確か、最低保証額の有無 |
テリトリー権(営業地域) | 独占的な営業地域が保証されているか、範囲は明確か |
競業避止義務 | 契約終了後の制限期間・地域・職種が過剰でないか |
秘密保持義務 | 保護されるべき秘密情報の範囲が具体的に定義されているか |
中途解約と違約金 | 解約の条件は何か、違約金の算定根拠は妥当か |
契約終了後の義務 | 原状回復義務の範囲、残存在庫の取り扱い |
これらのフランチャイズ契約書チェックポイントに一つでも曖昧な点があれば、必ず本部に書面での説明を求め、その回答を保管しておくことがトラブルを防ぐ第一歩です。
競業避止義務や秘密保持契約の注意点
競業避止義務とは、「契約終了後、一定の期間・地域において、フランチャイズ事業と同種または類似の事業を行ってはならない」という義務のことです。
この条項が過度に厳しいと、契約終了後の再スタートが困難になるため、その妥当性を慎重に判断する必要があります。
判例では、期間が1~3年程度、地域が旧営業区域内など、本部のノウハウ保護のために必要最小限の範囲でなければ、公序良俗に反して無効とされることがあります。
同様に、秘密保持契約についても、守るべき「秘密」の範囲が曖昧だと、あらゆる情報を理由に損害賠償を請求されるリスクがあるため、どの情報が秘密にあたるのか具体的に定義されているかを確認しましょう。
有効性の判断ポイント | 確認事項 |
---|---|
期間の長さ | 3年を超えるなど、不当に長くないか |
地域の広さ | 旧営業地域を大きく超えるなど、不当に広くないか |
職種の制限範囲 | 関連性の低い職種まで幅広く禁止されていないか |
代償措置の有無 | 義務を課す見返りとして、本部からの金銭的補償などがあるか |
フランチャイズの競業避止義務や秘密保持契約は、加盟店の職業選択の自由を制限する強力な条項です。
契約書にサインする前に、これらの内容が自身の将来を不当に縛るものではないか、弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
クーリングオフ制度の適用条件と中途解約の方法
クーリングオフとは、「契約後、一定の期間内であれば無条件で契約を解除できる制度」ですが、事業者を対象とするフランチャイズ契約には、原則として適用されません。
ただし、例外的に特定商取引法の「業務提供誘引販売取引」に該当すると判断された場合は、クーリングオフが可能です。
具体的には、本部が「この仕事で収入が得られる」と誘い、加盟店に仕事道具の購入など金銭的な負担をさせて業務を行わせるようなケースです。
この場合、契約書面を受け取った日から20日以内であれば、書面で通知することで契約を解除できます。



もう契約しちゃったけど、やっぱり辞めたい…どうすればいい?



中途解約の条項を確認しましょう。合意解約を目指すのが基本ですが、本部に契約違反があればそれを理由に解除を主張できます。
クーリングオフが適用できない場合のフランチャイズ中途解約は、契約書の定めに従って進めることになります。
解約方法 | 概要と注意点 |
---|---|
合意解約 | 本部との話し合いにより、双方の合意のもとで契約を終了させる方法。違約金の減額交渉も可能 |
契約違反による解除 | 本部側にロイヤリティの過大請求や業務指導の不履行など、重大な契約違反がある場合に主張できる方法。証拠が重要 |
法定解除 | 詐欺や強迫によって契約させられた場合など、民法の規定に基づいて契約を取り消したり解除したりする方法 |
フランチャイズ契約の解約は、高額な違約金を請求されるリスクを伴います。
一方的に解約を通告する前に、まずは契約書の内容を再確認し、弁護士に相談しながら最も有利な方法を選択することが大切です。
弁護士を通じた交渉の流れと費用目安
当事者間での話し合いが難しい場合、弁護士に依頼して代理人として交渉してもらうことが有効な解決策となります。
法的な観点から的確な主張を組み立て、冷静に交渉を進めてもらえるため、精神的な負担が大幅に軽減されるだけでなく、有利な条件での和解も期待できます。
弁護士に依頼した場合、まず内容証明郵便で本部にこちらの主張と要求を通知し、交渉のテーブルについてもらうことから始めるのが一般的です。
費用は法律事務所によって様々ですが、一般的な相場は以下の通りです。
ステップ | 内容 | 費用目安(税別) |
---|---|---|
法律相談 | 弁護士に現状を説明し、法的な見通しや解決策について助言を求める | 30分5,000円~1万円 |
依頼(委任契約) | 正式に代理人として交渉を依頼する | 着手金:20万円~50万円 |
内容証明郵便送付 | こちらの主張と要求をまとめ、正式な書面として本部に送付する | 3万円~5万円程度(作成・発送代行) |
本部との交渉 | 弁護士が代理人となり、電話や面談で和解条件を交渉する | 成功報酬:獲得した経済的利益の10%~20% |
最近では初回相談を無料で行っている法律事務所も多いため、フランチャイズ問題に強い弁護士を何人か探し、まずは法律相談を受けてみることをおすすめします。
信頼できるパートナーを見つけることが、トラブル解決への近道です。
裁判外紛争解決手続(ADR)の活用法
裁判外紛争解決手続(ADR)とは、「訴訟(裁判)をせずに、あっせん、調停、仲裁といった方法で紛争解決を目指す手続き」のことです。
中立・公正な第三者が間に入ることで、当事者同士の話し合いを円滑に進めることを目的としています。
訴訟に比べて費用が安く、手続きが非公開で、解決までの期間も短いというメリットがあります。
フランチャイズの争議解決では、各地の弁護士会が運営する仲裁センターや、経済産業大臣の認証を受けた日本商事仲裁協会(JCAA)などのADR機関を利用できます。
申立手数料は数万円程度からで、3ヶ月~半年程度での解決を目指せます。
メリット | デメリット |
---|---|
費用が訴訟より安い | 相手方が出席を拒否することがある |
手続きが非公開でプライバシーが守られる | 和解案に法的な強制力がない場合がある |
解決までの期間が短い(通常3~6ヶ月) | 証拠調べの手続きが訴訟ほど厳格ではない |
ビジネスの実情に即した柔軟な解決が可能 | 複雑な法律問題の判断には向かないことがある |
交渉が決裂したものの、訴訟にまで発展させたくないという場合に、ADRは非常に有効な選択肢です。
ただし、相手方が話し合いに応じる意思がなければ手続きを進められないため、相手の態度を見極めた上で活用を検討しましょう。
訴訟に発展した場合の期間と費用の全体像
交渉やADRでも解決が見込めない場合、最後の手段として訴訟を提起することになります。
裁判所の判決という公的で強制力のある判断を得られることが、訴訟の最大のメリットです。
契約の無効や損害賠償請求など、金銭的な解決を求める場合に利用されます。
ただし、訴訟には多大な時間と費用がかかることを覚悟しなければなりません。
フランチャイズ訴訟は争点が複雑になりがちで、第一審判決が出るまでに平均して1年半から2年程度の期間を要します。
費用も弁護士費用だけで着手金・成功報酬合わせて100万円以上になることが多く、決して手軽な手続きではありません。



訴訟って、やっぱり大変そう…



はい、時間も費用も精神的な負担も大きいです。だからこそ、訴訟は最後の手段と考え、その前の交渉やADRで解決できるよう全力を尽くすべきです。
費用の種類 | 内容 | 目安 |
---|---|---|
印紙代 | 裁判所に納める手数料。請求する金額によって変動する | 請求額1000万円なら5万円 |
郵券(切手)代 | 訴状などの書類を相手方に送達するための費用 | 6,000円程度(東京地方裁判所の場合) |
弁護士費用(着手金) | 訴訟代理を依頼する際に支払う費用 | 30万円~(請求額による) |
弁護士費用(報酬金) | 勝訴した場合に支払う成功報酬 | 獲得した経済的利益の10%~20% |
日当・実費 | 弁護士が裁判所に出廷する際の日当や交通費、証拠収集にかかる費用など | 実費 |
フランチャイズ訴訟に踏み切る前には、勝訴の可能性、勝訴して得られる利益、そして訴訟にかかる費用と期間、精神的負担を総合的に考慮し、弁護士と十分に協議した上で慎重に判断することが不可欠です。
交渉で役立つ是正要求書の雛形と証拠整理フォーマット
本部との交渉を有利かつスムーズに進めるためには、事前準備が欠かせません。
特に、「是正要求書」で主張を明確に示し、「証拠整理フォーマット」で裏付けとなる証拠を整理しておくことが、交渉の結果を大きく左右します。
是正要求書とは、本部による契約違反や不当な行為を具体的に指摘し、その改善を求めるための書面です。
口頭での抗議と異なり、書面にまとめることで「言った・言わない」の争いを防ぐと同時に、こちらの真剣な姿勢を示すことができます。
さらに、後の交渉や法的手続きで証拠として利用できるように、「いつ・誰が・何を要求したのか」を記録に残すため、必ず内容証明郵便で送付しておきましょう。
是正要求書の記載項目 | 具体的な内容例 |
---|---|
タイトル | 是正要求書 |
前文 | いつ加盟契約を締結したかなどの基本情報を記載 |
事実経緯 | 本部による契約違反行為(例:テリトリー権の侵害、不十分な業務指導)を時系列で具体的に記述 |
契約上の根拠 | どの行為が契約書第〇条に違反するのかを明記 |
要求事項 | 「〇月〇日までに侵害行為を中止し、再発防止策を書面で回答されたい」など、具体的に求める対応を記載 |
回答期限 | 2週間後など、具体的な期限を設定 |
その他 | 「期限内に誠意あるご回答なき場合は、やむを得ず法的措置を講じる所存です」などの一文を追加 |
是正要求書とあわせて、主張の根拠となるメール、写真、音声データなどの証拠を時系列で整理した一覧表(証拠整理フォーマット)を作成しておくと、弁護士への相談やその後の交渉がスムーズに進みます。
これらの書面をきちんと準備することが、有利な和解条件を引き出すための第一歩です。
無料で相談できる窓口一覧と契約前のトラブル防止策
フランチャイズ契約のトラブルは一人で抱え込まず、専門機関に相談することが解決への第一歩です。
ここでは、無料で相談できる公的機関の活用法から、トラブルを未然に防ぐための具体的なチェックポイントまで解説します。
具体的には国民生活センターの活用法や情報開示書面のチェックリストなどを紹介します。
加盟前の方はもちろん、すでにトラブルに直面している方も、これらの情報を活用して冷静に対応しましょう。
最初に相談すべき国民生活センターの活用法
国民生活センターは、消費生活全般に関する苦情や問い合わせを受け付ける公的な相談窓口です。
フランチャイズ契約も事業者と個人の契約とみなされ、相談対象となります。
全国の消費生活センターには、年間約90万件もの相談が寄せられており、フランチャイズに関する専門相談員が対応してくれるケースもあります。
電話番号「188」にかけると、最寄りの窓口を案内してくれます。



国民生活センターでは、具体的にどんなことをしてくれるの?



トラブル内容の整理、本部への伝え方のアドバイス、必要に応じてあっせん(話し合いの仲介)まで行ってくれます。
項目 | 内容 |
---|---|
相談方法 | 電話(188)、来所 |
費用 | 無料 |
対応内容 | トラブル整理、助言、情報提供、あっせん |
対象者 | フランチャイズ加盟を検討中の個人、加盟店オーナー |
まずは現状を客観的に整理するために、最初の相談先として国民生活センターを積極的に活用することをおすすめします。
中小企業基盤整備機構や商工会議所ができること
中小企業基盤整備機構(中小機構)や商工会議所は、中小企業の経営全般を支援する公的機関です。
中小機構では、経営相談窓口「経営相談チャット」を設置しており、24時間365日いつでも相談ができます。
商工会議所では、地域の専門家による無料相談会などを定期的に開催しています。
機関名 | 主な支援内容 | 特徴 |
---|---|---|
中小企業基盤整備機構 | 経営相談、専門家派遣、資金調達支援 | 国の機関であり全国規模の支援体制 |
商工会議所 | 地域の専門家による相談会、セミナー開催 | 地域に密着したきめ細やかなサポート |
これらの機関は直接的な紛争解決は行いませんが、経営面での客観的なアドバイスや、補助金・融資などの情報提供を通じて、事業の立て直しをサポートしてくれます。
フランチャイズ問題に強い弁護士の探し方
法的な措置を視野に入れる場合、フランチャイズ問題に強い弁護士への相談が不可欠です。
フランチャイズ契約は特殊な論点が多く、専門知識を持つ弁護士を選ぶことが重要になります。
弁護士を探す際は、日本弁護士連合会のウェブサイト「ひまわりサーチ」で「フランチャイズ」や「下請法」といったキーワードで検索するのが効率的です。
また、これまでに最低でも10件以上のフランチャイズ案件を扱った経験があるかを確認しましょう。



弁護士に相談すると、費用が高そうで心配…



初回相談を無料で行っている法律事務所も多いですよ。まずは30分〜1時間程度の無料相談で、見通しや費用について確認することから始めましょう。
チェック項目 | 確認する理由 |
---|---|
フランチャイズ案件の取扱実績 | 業界特有の問題点や判例に精通しているか |
料金体系の明確さ | 着手金、成功報酬、時間単価などが分かりやすいか |
コミュニケーションのしやすさ | 専門用語を使わず、分かりやすく説明してくれるか |
リスク説明の有無 | メリットだけでなく、考えられるリスクも正直に伝えてくれるか |
複数の弁護士に相談し、最も信頼できると感じた専門家に依頼することが、フランチャイズトラブルを有利に解決する鍵となります。
日本フランチャイズチェーン協会(JFA)への相談
一般社団法人日本フランチャイズチェーン協会(JFA)は、フランチャイズビジネスの健全な発展を目指す業界団体です。
JFAでは「フランチャイズ相談センター」を設置しており、中立的な立場からフランチャイズに関する相談を受け付けています。
ただし、JFAに加盟しているチェーンに関する相談が中心となります。
項目 | 内容 |
---|---|
相談方法 | 電話、面談(要予約) |
費用 | 無料 |
対象 | JFA加盟チェーンの加盟店や加盟検討者 |
注意点 | 個別紛争の仲介やあっせんは行わない |
JFAへの相談は、業界の慣行や倫理基準に照らして本部側の対応が適切かどうか、客観的な意見を聞きたい場合に有効です。
契約前に確認すべき情報開示書面のチェックリスト
法定開示書面(情報開示書面)は、フランチャイズ契約を締結する前に、本部が加盟希望者に対して交付を義務付けられている書類です。
トラブル防止の観点から、この書面を徹底的に読み込むことが極めて重要になります。
中小小売商業振興法では、最低でも18項目にわたる情報の開示が義務付けられています。
特に、ロイヤリティの計算方法や契約解除に関する条項は、一言一句見逃さずに確認してください。



情報開示書面って、分厚くて読むのが大変…どこを重点的に見ればいいの?



特に「契約期間・更新・解除に関する事項」「加盟店に対し特別の義務を課す場合にはその内容」「事業に関する訴訟の概要」の3点は必ず確認しましょう。
チェック項目 | 確認内容 |
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本部の財務状況 | 直近3事業年度の貸借対照表および損益計算書 |
ロイヤリティ | 計算根拠、支払時期、変動の有無 |
契約解除・違約金 | 解除の条件、違約金の算定方法 |
訴訟の有無 | 過去に本部が当事者となった訴訟の概要 |
テリトリー権 | 営業地域の保護範囲が明確に定められているか |
書面に記載されている内容で少しでも疑問があれば、必ず契約前に本部に書面で質問し、回答を得ておくことが大切です。
トラブルを未然に防ぐための加盟前チェックポイント
フランチャイズ契約のトラブルを避けるためには、加盟前の慎重な検討と情報収集が何よりも重要です。
勢いや夢だけで契約してしまうのは非常に危険です。
契約を結ぶ前に、最低でも3社以上のフランチャイズ本部を比較検討し、5店舗以上の既存加盟店を訪問して、オーナーから直接話を聞くことを強くおすすめします。
チェック項目 | 確認方法 |
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本部のサポート体制 | 研修内容、スーパーバイザーの巡回頻度などを確認 |
収益モデルの現実性 | 本部が提示する収益シミュレーションの根拠を問いただす |
既存店の評判 | 実際に店舗を訪れ、オーナーやスタッフの話を聞く |
契約書の持ち帰り検討 | その場で契約を迫られても、一度持ち帰り専門家に相談 |
これらのチェックポイントを一つひとつクリアし、すべての疑問点を解消してから契約に臨むことが、将来のフランチャイズトラブルを未然に防ぐ最も確実な方法と言えるでしょう。
まとめ
この記事では、「フランチャイズ契約 トラブル」で多く見られるロイヤリティ未払や営業地域の侵害、突然の契約解除といった問題に対し、優先的に取るべき3つの対応ステップを整理しました。
さらに、具体的な証拠の集め方、契約書のチェックポイント、内容証明郵便の活用から弁護士・裁判外紛争解決手続(ADR)・訴訟までの流れと費用の目安、そして国民生活センターなどの相談先についても解説しています。
特に、初動で証拠を確保できるかどうかが解決の成否を大きく左右します。
- 初動の証拠保全
- 内容証明送付による意思表示
- 弁護士・ADRを含む交渉準備
- 契約書の不利条項チェックリスト
まず、契約書の原本と直近1年分の請求書や入金記録に加え、メール・音声・写真などの証拠を整理して基盤を固めましょう。
そのうえで、内容証明郵便で意思を示し、国民生活センターやフランチャイズ問題に詳しい弁護士へ早めに相談することが重要です。