一人社長になると、健康診断について「自分にも受ける義務があるのか」「費用を会社の経費にできるのか」が、急にあいまいになります。会社員のころは会社が用意してくれたものを、これからは自分で判断するからです。
結論から言うと、社長自身に法律上の受診義務はありません。ただし、義務がないこととおすすめしないことは別です。代わりのいない一人社長こそ、健康管理は事業のリスク管理そのものになります。
この記事では、法律上の義務の有無、経費にできる条件、協会けんぽの補助という三つの論点を、国税庁や厚生労働省の情報をもとに整理します。経費の扱いは個別事情で変わるため、最終的な判断は税理士に相談する前提でお読みください。
- 一人社長に法律上の健康診断の義務があるかどうか
- 義務がなくても受けたほうがよい理由
- 協会けんぽの生活習慣病予防健診の補助
- 健診・人間ドック費用を経費にできる条件と注意点
一人社長に健康診断の義務はあるか
労働安全衛生法は、事業者に対し常時使用する労働者への定期健康診断(年1回)を義務づけています(厚生労働省労働安全衛生法に基づく健康診断)。ここでいう対象は「労働者」であり、会社の役員である社長自身は労働者にあたらないため、法定の受診義務はありません。

注意したいのは、従業員(労働者)を雇った場合です。そのときは、事業者としてその従業員に健康診断を受けさせる義務が生じます。社長一人のうちは義務なし、人を雇えば従業員ぶんの義務あり、と整理しておきましょう。
相談者社長の自分は、健康診断を受けないと法律違反になりますか?



いいえ、社長ご自身に法定の義務はありません。ただ従業員を雇ったら、その方には受けさせる義務が出てきます。
義務がなくても受けたほうがよい理由
義務がないからといって、受けない理由にはなりません。一人社長は自分が倒れると事業が止まるという、会社員とは違うリスクを抱えています。代わりに動ける人がいないからこそ、早期発見の価値が大きいのです。
健康を崩してからでは、取引先への影響も資金繰りも一気に重くなります。受診は「コスト」ではなく、事業を続けるための備えだと考えると、優先順位を上げやすくなります。



義務がないなら、つい後回しにしてしまいそうです…。



気持ちはわかります。でも社長が倒れると会社も止まります。年1回だけでも予定に入れておくと安心ですよ。
一人社長が受けられる健康診断と協会けんぽの補助
社長が受けられる健康診断には、一般的な定期健診に相当するもの、より詳しく調べる人間ドック、がん検診などがあります。費用を抑えたいときに見落としがちなのが、協会けんぽの生活習慣病予防健診です。
協会けんぽに加入していれば、35歳から74歳の加入者本人を対象に生活習慣病予防健診を受けられ、費用の約7割を協会けんぽが補助します(全国健康保険協会 健診について(被保険者))。自己負担額は健診機関や年度によって異なります。まずは加入している健康保険の補助を確認するのが、費用面では近道です。



できるだけ費用を抑えて受けたいです。



まず協会けんぽの予防健診を確認しましょう。35歳以上なら費用の約7割が補助されますよ。
健康診断や人間ドックの費用は経費にできるか
会社が負担する健康診断の費用は、条件を満たせば福利厚生費として経費にできます。国税庁は、人間ドックなどの費用を給与として課税しなくてよい条件を示しています(国税庁 質疑応答事例「人間ドックの費用負担」)。


ポイントは、役員・使用人の全員を対象とし、一定年齢以上の希望者が全員受けられること、社会通念上著しく高額でないこと、会社が医療機関へ直接支払うことです。特定の人だけを対象にしたり、高額すぎたりする場合は、給与として課税されます。日常の経費管理の考え方は、会社のお金の管理もあわせてご覧ください。
経費にするときの注意点
一人社長だけの会社では「全員対象」という条件は満たしやすい一方、高額な人間ドックなどは給与とみなされるリスクがあります。安全に処理するためのポイントを押さえておきましょう。
- 役員・使用人の全員を対象にする(特定の人だけは給与課税)
- 社会通念上、著しく高額な内容にしない
- 会社が医療機関へ直接支払う(立替なら精算と記録を明確に)
- 高額な人間ドックは給与とみなされるリスク。規程を整え税理士に確認
判断に迷う部分は、税理士に確認するのが確実です。とくに人間ドックのオプションを増やすと金額が大きくなりがちなので、経費にできる範囲は事前にすり合わせておくと安心です。



人間ドックのオプションも全部つけて経費にできますか?



高額になると給与扱いになりやすいんです。一般的な範囲にとどめて、心配なら税理士に確認すると安心ですよ。
まとめ
- ✓ 社長自身に法定義務はない:定期健診の義務は労働者が対象。社長は対象外
- ✓ 従業員を雇えば義務あり:事業者としてその従業員に健診を受けさせる
- ✓ 義務がなくても受ける:代わりがいない一人社長こそ早期発見の価値が大きい
- ✓ 協会けんぽの補助を使う:35歳から74歳の本人は予防健診で費用の約7割補助
- ✓ 経費は条件を満たす範囲で:全員対象・著しく高額でない・会社が直接支払う
一人社長に法律上の健診義務はありませんが、健康は事業の土台です。協会けんぽの補助を使って受診し、費用は福利厚生費の条件を満たす範囲で経費にする。この形を整えておけば、健康管理とお金の両面で無理がありません。
(最終更新:2026年6月。引用した制度・取り扱いは2026年6月時点の厚生労働省・国税庁・全国健康保険協会の情報にもとづきます。経費の判断は個別事情で変わるため、最新情報と具体的な処理は税理士にご確認ください。)
よくある質問
- 一人社長に健康診断の義務はありますか?
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社長自身に法律上の受診義務はありません。労働安全衛生法の定期健康診断は常時使用する労働者が対象で、労働者にあたらない社長は対象外です。ただし従業員を雇うと、事業者としてその従業員に健診を受けさせる義務が生じます。
- 義務がないなら受けなくてもいいですか?
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受けることをおすすめします。一人社長は代わりがいないため、健康を崩すと事業が止まります。義務の有無とは別に、リスク管理として定期的な受診が大切です。
- 健康診断や人間ドックの費用は会社の経費にできますか?
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条件を満たせば福利厚生費にできます。役員・使用人の全員を対象とし、一定年齢以上の希望者が全員受けられ、社会通念上著しく高額でなく、会社が直接支払うことが基本の条件です(国税庁)。特定の人だけや高額すぎるものは給与として課税されます。
- 一人社長だけの会社でも経費にできますか?
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全員対象という条件は満たしやすいものの、高額な人間ドックなどは給与とみなされるリスクがあります。一般的な範囲にとどめ、会社が直接支払い、規程を整えておくと安全です。判断は税理士に確認しましょう。
- 協会けんぽの補助は使えますか?
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協会けんぽに加入していれば使えます。加入者本人は、35歳から74歳を対象に生活習慣病予防健診を受けられ、費用の約7割が補助されます。自己負担額は健診機関や年度によって異なります(健康保険組合や国民健康保険など加入先が異なる場合は、各保険者の補助をご確認ください)。
- 家族や従業員の健康診断費用も経費になりますか?
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従業員(労働者)の法定健診費用は会社が負担するのが原則で、経費になります。家族についても、従業員として全員対象の条件を満たせば福利厚生費にできますが、扱いが分かれるため税理士に相談しましょう。

